市川速水(いちかわ・はやみ) 朝日新聞編集委員
1960年生まれ。一橋大学法学部卒。東京社会部、香港返還(1997年)時の香港特派員。ソウル支局長時代は北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議を取材。中国総局長(北京)時代には習近平国家主席(当時副主席)と会見。2016年9月から現職。著書に「皇室報道」、対談集「朝日vs.産経 ソウル発」(いずれも朝日新聞社)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
課題山積の日韓関係、「大人の余裕」も必要では
首脳外交の表舞台に出ずっぱりだった安倍首相に比べて、菅氏は韓国で「政権スポークスマン」としての顔以外は、ほぼ知られていない。むしろ、韓国メディアは、政権や安倍氏の代弁者として「問題発言」を強調するステレオタイプの報道が目立った。一方で、菅氏のビジネスライクでクールな物言いは、韓国に歓迎されないことも多かった。
例えば2014年1月、中国が韓国の依頼を受けて黒竜江省・ハルビンに安重根(アン・ジュングン)の記念館を建てた時。安重根は日本による朝鮮半島植民地支配の前夜(1909年)、初代韓国統監の伊藤博文をハルビン駅で銃殺し、死刑となった。朝鮮民族独立活動家として韓国で「義士」と呼ばれ絶大な人気がある。
菅氏は記念館が完成したことについて「極めて残念で遺憾。(安重根は)死刑判決を受けたテロリストだ。韓国・中国が連携した動きは、地域の平和と協力関係の構築に資さない」と批判した。
この「テロリスト発言」に韓国側が鋭く反応し、「日本の帝国主義時代に伊藤博文がどんな人物だったのかを振り返れば、官房長官発言はありえない。安重根義士は我が国の独立と東洋の平和のために命を捧げた」と反論した。
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