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最後の闘い

 私は昨年3月から今年3月まで、この「論座」に合計36回、「小沢一郎戦記」を連載した。連載を加筆、再構成した著書『職業政治家 小沢一郎』をこの10日、朝日新聞出版から刊行したばかりだ。

 もう「時効」だから少しばかり内幕話を書いても許されると思うが、連載の当初、毎回のメインタイトルなどをめぐって小沢氏の事務所と編集部の間で意見の食い違いがあった。

 編集部としては当然、ページビューを上げるために好奇心の湧く見出しを考える。ところが、そのような見出しは往々にして小沢氏の忌憚に触れた。

 小沢氏にしてみれば、最大の政治目標である「政権交代」を目指すために障害物は細心の注意を払って取り除く必要がある。野党が一つのかたまりになる上で心理的障害となる見出しには厳しく反対せざるをえなかった。

 その考えは徹底していて、小沢氏事務所と編集部の板挟みにあった私の「心理的障害」も一時期かなり高まった。

 「障害」を乗り越え、出版にこぎつけた『職業政治家 小沢一郎』の本の帯には作家の佐藤優氏や東大名誉教授の井上達夫氏、法政大教授の山口二郎氏から推挙の言葉をいただいた。

 その中でも山口氏の言葉は、この原稿を書く上でのヒントが詰まっている。

 ――この30年、多くの凡庸な政治家は敗北で淘汰された。小沢という政治家は(略)何度も敗北した。(略)敗北から立ち上がり、もう一度政権交代を目指すことは、小沢さんの最後の戦いである

 ここで山口氏の言う「多くの凡庸な政治家」はなぜ淘汰され、小沢氏は何度も敗北をなめながらもなぜ生き残って、議員在職50年の特別表彰を後回しにできるだけのエネルギーを保ち続けているのだろうか。

 その答えは、まさに「政権交代」を常に目指し、「議会政治の日本への定着」や「政治改革」を細大の眼目にしているからだ。この眼目の実現を自身の最高の政治的使命とし、徹底しているからこそ細心の注意を払ってネットメディアのタイトルに目を凝らし、必要とあれば厳しく指摘しなければならないのだ。

 このことは、言うは易いが行うことはなかなか難しいことなのではないか、と私は思う。

拡大小沢一郎氏

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

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