星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト
1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。
トランプ、プーチン……信頼関係は築いたが、日本独自の理想像や展望は示せず
9月14日、菅義偉官房長官が自民党の新総裁に選ばれた。16日には衆議院本会議で菅氏が首相に指名され、菅政権が発足。歴代最長の7年8カ月続いた安倍晋三政権が幕を閉じる。本稿では、安倍政権の外交に焦点を当ててその問題点を探りたい。
日米同盟の強化や対中国戦略については後述するとして、安倍政権の対ロシア外交から検証しよう。
安倍首相は退陣表明から3日後の8月31日、ロシアのプーチン大統領と電話で協議した。日本側の説明によると、安倍首相が持病の悪化を理由に辞任することを伝えたうえで、日ロ両国が今後も平和条約交渉を続けていくことで両首脳は一致した。
プーチン氏は「これからも友情を大切にしたい。またお会いするのを楽しみにしている」と述べ、日本語で「シンゾ―、アリガトウ」と結んだ。安倍氏は、プーチン氏をファーストネームで呼び、「ウラジーミル、スパシーバ(ありがとう)」と応じたという。だが、安倍首相が政権の最優先課題としてきた北方領土問題の解決と平和条約の締結は、果たせないまま、菅政権に引き継がれることになった。
この電話でのやり取りは、両首脳の個人的信頼関係を物語るが、まさにその信頼関係が対ロシア外交の落とし穴となったのである。
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