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新「立憲民主党」結党 政局本位から脱却しポストコロナの新しいモードへ 

神津里季生・山口二郎の往復書簡(9)政局モードの思考パターンはもういらない

神津里季生 連合会長

3年前の政変劇を繰り返さないように

 労働組合と政治の関係についての一般的な理解は、世上あまり肯定的なものではないかもしれません。そういう視線からすれば、「心身をすり減らす」とはなんと大げさなとか、もっとやるべきことがあるだろうといった声が出るかもしれません。

 そのような批判に対する反論は山ほどあるのですが、それはまた別の機会に譲るとして、ここでは、私が今回の局面で深く心に刻んでいたことを述べておきたいと思います。それは、3年前の政変劇のように、理念・政策が、政局に破壊されるようなことだけは、絶対に繰り返されてはならないということなのです。

 先日、ある全国紙の記事で、3年前の希望の党騒動が神津のトラウマになっており、そのためしゃにむに合流新党に入れ込んでいるのだ、という趣旨の説明がありました。しかも、いまだに世の中に残る誤解を利用して、私自身が政変劇を仕掛けた一員であるかのごとき内容です。

 拙著『神津式労働問題のレッスン』(毎日新聞出版)でも詳述したように、私の立場は小池百合子東京都知事・前原誠司民進党代表(当時)を中心とした安易で未熟な計画の被害者です。しかも当時の陰の立役者は、まさにその全国紙の政治部出身の某氏であり、彼が小池側近として差配をしていたのですから、あきれる他ありません。

理念が吹き飛ばされることはなんとか回避

 この政変劇で幻となった当時の民進党のマニフェストは、オール・フォア・オール(注)を軸においた、確固とした理念を表現したものであったと言われています。私たち連合もそれと軌を一にした政策協定を民進党と結ぶはずでした。しかし、あの混乱の中で、どの政党も協定を結ぶ対象とはなりませんでした。

注)オール・フォア・オール 財政学者の井手栄策慶応大学教授が提唱した「皆で支え合う社会」を目指す考え方。

 トラウマと言われようがなんであろうが構いません。ただあの時のような有権者不在の政局の爆発で、理念が破壊されるようなことだけは許せないのです。

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筆者

神津里季生

神津里季生(こうづ・りきお) 連合会長

1956年東京都生まれ。東京大学教養学部卒。在学時は野球部マネジャー。79年、新日本製鐵に入社。84年に本社労働組合執行委員となり、専従役員の活動を始める。外務省と民間の人事交流で90年より3年間、在タイ日本大使館に勤務。その後、新日鐡労連会長、基幹労連中央執行委員長などを経て、2013年に連合会事務局長に就任、15年より同会長。近著に「神津式労働問題のレッスン」。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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