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「原発報道」は戦後ジャーナリズムの敗北の原点である

ジャーナリスト柴田鉄治さんの訃報に接して

石川智也 朝日新聞記者

 朝日新聞の社会部長、科学部長、論説委員を歴任したジャーナリスト柴田鉄治の訃報が8月末に届いた。

 ここ10年のあいだ何度か話を聞く機会を得たが、このところの話題はいつも政治とメディア(より具体的に言えば、安倍政権と官邸記者)の問題に収斂した。沈着かつ折り目正しい性格の人だったが、会話の最後にはいつも、後輩たち(私も含めた)への叱咤と失望をないまぜにして嘆息でくるんだ言葉を漏らした。

 柴田の逝去は安倍首相の辞意表明の直前だったが、もし間に合っていたとしても、この間のメディアのあり方を「敗北」と総括しただろう。

拡大朝日新聞退社後も科学ジャーナリストとして活躍した柴田鉄治

 この「敗北」は信念や職業倫理に殉じた結果のそれではなく、既成事実に屈した不戦敗であることは言うまでもない。7年8カ月もの長期政権を許した云々以前に、事実に肉薄し、不都合な真実に向き合い、権力や大資本との不明朗な関係を断ち切ってそれらに切り込み、臆さず付和雷同せず世に警鐘を鳴らす――というジャーナリズム本来の役割を果たしたのか。それは私たち報道人が厳しく問われていることであるし、柴田も常に省みていたことだった。

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筆者

石川智也

石川智也(いしかわ・ともや) 朝日新聞記者

1998年、朝日新聞社入社。岐阜総局などを経て社会部でメディアや教育、原発など担当した後、2018年から特別報道部記者、2019年9月からデジタル研修中。慶応義塾大学SFC研究所上席所員を経て明治大学感染症情報分析センターIDIA客員研究員。著書に「それでも日本人は原発を選んだ」(朝日新聞出版、共著)等

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