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UAEのコロナ対策に見える市民監視とイスラエルの情報機関モサドの影

[2]イスラエルとの国交正常化で強調される「協力」は治安問題

川上泰徳 中東ジャーナリスト

コロナ対策協力の背後にモサドの動き

 イスラエルの主要紙イェディオト・アハロノト系のニュースサイト「Yネット」は「イスラエルとUAEのコロナ対策での協力はこのように始まった」というタイトルで記事を掲載し、次のような記述があった。

 「3月26日、イスラエルで数十万のコロナ検査キットが足りなくなった時、ウクライナ航空の貨物機がベングリオン空港に到着した。同機は10万の検査キットを積んでいた。モサドが力を貸した特別機がどこから来たかは、これまで秘密にされていたが、それはUAEだった」

 記事では、「当時は政府の報道規制によって、『イスラエルとは外交関係のない国からの飛行機』とだけ報じることが認められた。飛行機はUAEのアブダビ空港から直接飛んできた」と補足した。国交正常化合意の5カ月前の3月に、イスラエルとUAEとのコロナ対策協力でモサドが動いていたということである。

Aneloshutterstock拡大UAEとイスラエルの協力関係の背後に、イスラエル諜報特務庁=モサドの影が見える(背景はモサドのマーク) Anelo/Shutterstock.com

 ここで疑問なのは、コロナ検査キットの調達という民生部門に、時には敵対組織の幹部の暗殺などで名前が挙がる情報機関のモサドがなぜ関わってくるのかということである。

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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