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沖縄の翁⻑前知事が菅新政権の喉元に残した「楔」

菅⽒と翁⻑⽒の間にあった決定的な歴史認識の齟齬

阿部 藹 琉球大学客員研究員

600年と19年 翁長知事が立った歴史の地平

 翁長知事がこの「自己決定権」をどのような意味で使ったのか。それを理解する鍵は、口頭声明の直前に開催された国連人権理事会のサイドイベントで翁長知事が行なった講演にある。

拡大2015年9月21日のサイドイベントで講演する翁長知事(当時)、筆者撮影

 知事はこの講演で、沖縄の歴史について600年前の琉球王国の成立から語り始めている。

 450年間、独立国として各地との交易で栄えていたこと。1879年に日本に武力で併合され、言語が禁止され、日本の一員となるべく努力を強いられたこと。

 それなのに太平洋戦争末期の地上戦では言語の違いからスパイの疑いをかけられ日本兵に殺された県民もいたこと。

 戦後米軍に占領され、土地が強制収容されたこと。そして1952年、日本が「米国から独立をする引き換えに、私ども琉球・沖縄を米軍の施政権下に差し出した」こと。

 1972年の本土復帰まで、国籍も権利もなく、無法地帯のような厳しい27年間を過ごしたこと。復帰した後も米軍基地は減るどころか増えたこと。

 そして老朽化した危険な基地の代わりに海を埋め立てて新しい基地を差し出せと要求されていること。

 翁長知事はこの600年の歴史に立ち、「時代の変化の中で自己決定権というものがある意味蹂躙されてきた」と語ったのだ。

 こうした600年の歴史を踏まえた自己決定権の訴えに対し、菅官房長官が定例会見で語ったコメントは、「19年にわたって多くの沖縄県関係者の協力を得ながら適正な手続きで進めてきた。そうしたことを踏まえない翁長知事の主張は国際社会で理解されないと思う」というものだった。

 国際法上の基本原則の一つである自己決定権の議論を、たかだか20年ほどの国内手続きに依拠して否定しようという論理こそ、国際社会では理解されないものだろう。

拡大記者会見する菅義偉官房長官=2015年9月24日、首相官邸

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筆者

阿部 藹

阿部 藹(あべ あい) 琉球大学客員研究員

1978年生まれ。京都大学法学部卒業。2002年NHK入局。ディレクターとして大分放送局や国際放送局で番組制作を行う。夫の転勤を機に2013年にNHKを退局し、沖縄に転居。島ぐるみ会議国連部会のメンバーとして、2015年の翁長前知事の国連人権理事会での口頭声明の実現に尽力する。その後仲間と共に沖縄国際人権法研究会を立ち上げ、沖縄の諸問題を国際人権法の観点から分析し情報発信を行っている。2017年渡英。エセックス大学大学院にて国際人権法学修士課程を修了。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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