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トランプ大集会、緊迫ルポ/コロナ禍でもマスク着用を無視、支持者密集で大歓声

園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員

「マスク着用が義務だったら参加していない」

 トランプ氏が選挙集会を開催するのは、ミシガン州フリーランドの地方空港の格納庫だ。

 トランプ陣営は最近、地方空港の格納庫を好んで利用している。正面の扉を開けて使えば会場の通気が良いうえ、支持者拡大を狙う郊外に立地しているという利点があるからだ。

 今回の開催場所となるフリーランドも、ミシガン州最大の都市デトロイトから車で2時間の距離にある郊外の都市だ。空港付近の道を車で走ると、トランプ支持のサインボードを庭に掲げた家々が目についた。

 9月10日正午過ぎ。

 開会から7時間前にもかかわらず、支持者たちが会場前に続々と列を作って並び始めた。多くの支持者が「MAKE AMERICA GREAT AGAIN(米国を再び偉大に)」のロゴが入った赤い帽子(通称「マガハット」)をかぶっている。

拡大トランプ大統領の選挙集会で、マスクを着用せず密集して並べられた席に座り、トランプ大統領の登場を待つ支持者たち=ミシガン州フリーランド、ランハム裕子撮影、2020年9月10日

 会場入り口では、トランプ陣営のスタッフたちが参加者のおでこに非接触型体温計をかざして検温していた。その後、「必要があればどうぞ」とマスクを配布していたが、受け取らない人たちが目立った。

拡大トランプ大統領の選挙集会の入り口で、配られるマスクの受け取りを拒否する支持者=ミシガン州フリーランド、ランハム裕子撮影、2020年9月10日
拡大トランプ大統領の選挙集会の入り口で、配られるマスクの受け取りを拒否する支持者=ミシガン州フリーランド、ランハム裕子撮影、2020年9月10日

 会場となる巨大な格納庫内に入ると、正面の扉は開かれ、トランプ氏が演説する演台を取り囲むように特設会場が設営されていた。

 ミシガン州では多数が集う集会ではマスク着用を義務化している。しかし、会場内でマスクを着用している人々は2~3割程度にとどまり、スタッフが着用を促す様子はみられなかった。

 開会時間が迫るにつれ、会場内の参加者の数はどんどん増え、お互いの体が触れ合うほどにぎゅうぎゅうの「密」状態となっていった。

 開会前の会場内では、耳をつんざくような大音量の音楽が流れている。

 私はマスクを着用し、相手と十分にソーシャル・ディスタンシングを取るように注意しているが、会話をする相手の声は聞こえづらい。マスクを着けていない参加者たちはお互いの耳元に口を近づけ、大声で話している。

拡大飛行機の格納庫で行われたトランプ大統領の選挙集会で、マスクを着用せず密集して並べられた席に座り、トランプ大統領の登場を待つ支持者たち=ミシガン州フリーランド、ランハム裕子撮影、2020年9月10日

 「どこから来たの?」

 「マガハット」をかぶった初老の女性が、にこにこしながら話しかけてきた。この女性も、マスクを着用していない。私がコロナ禍のさなかでもトランプ氏の選挙集会に参加している理由を尋ねると、「コロナを恐れるよりも、『言論の自由』の方がもっと大事よ」と胸を張った。

 多くのメディア報道を通じたトランプ支持者像は、メディアの記者に対して攻撃的な態度をとるという印象が強い。しかし、実際に話してみると、とても気さくでフレンドリーな人たちが多く、これまで私が取材を申し込んだケースでも取材拒否をした人たちはほとんどいない。もしかしたら日本メディアは米国の主要メディアとは違う、という考えをもっているのかもしれない。

 ただし、彼らの主張を聞いてみると、とても先鋭的であり、気さくな人柄とのギャップに驚くことがしばしばある。

拡大トランプ大統領の選挙集会終了後、笑顔で帰る支持者たち=ミシガン州フリーランド、ランハム裕子撮影、2020年9月10日

 マスクを着用せずに演台を眺めていた無職のマイクさんは(67)は、「コロナは民主党がこの国の分断と経済的な混乱を引き起こすために利用している話だ」と顔をしかめた。

 マスク着用の義務について聞くと、「全く同意できないね。もし今日のイベントでマスク着用が義務だったら参加していないよ」と答えた。

 一方、会場内で配られたマスクを着用していた重機運転手アンドリュー・ブルーダさん(49)は、「コロナウイルスはウソではないと思うけど、人数は正確ではないし、大げさだ」と熱心な表情で語り、メディアのコロナ報道のあり方に強い不信感を示した。

 「このまま経済を止め続けたら、多くの人が死んでしまう」とも述べ、トランプ氏の経済活動の早期再開の方針を支持した。

拡大トランプ大統領の選挙集会で、星条旗がデザインされた服をまといトランプ大統領の登場を待つ支持者たち=ミシガン州フリーランド、ランハム裕子撮影、2020年9月10日

 トランプ陣営は、大規模選挙集会時のコロナ感染を防ぐ手立てについて、「コロナの流行期間中、我々は州と地方のガイドラインに従っている」(広報担当)と語る。

 しかし、現場の会場で取材すれば、この言葉が守られていないことがわかる。

 例えば、今回会場となったミシガン州のガイドラインでは、大規模集会時に会場内に椅子を配置する際は、ソーシャル・ディスタンシングを守って1.8メートルの距離を取るように定めているが、この日の集会では椅子が隙間なくぎちぎちに並べられていた。

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筆者

園田耕司

園田耕司(そのだ・こうじ) 朝日新聞ワシントン特派員

1976年、宮崎県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒、朝日新聞入社。福井、長野総局、西部本社報道センターを経て、2007年、政治部。総理番、平河ク・大島理森国対委員長番、与党ク・輿石東参院会長番、防衛省、外務省を担当。2015年、ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員。2016年、政治部国会キャップとして日本の新聞メディアとして初めて「ファクトチェック」を導入。2018年、アメリカ総局。共著に「安倍政権の裏の顔『攻防 集団的自衛権』ドキュメント」(講談社)、「この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か」(筑摩書房)。メールアドレスはsonoda-k1@asahi.com

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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