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順調なスタートを切った菅政権が抱える難題と失速のリスク

変動する時代にイデオロギーより個別課題の調整を重視するスタイルだけで通用するのか

星浩 政治ジャーナリスト

注目される携帯電話料金の引き下げだが……

 菅政権がめざす中期的な課題は、規制改革や省庁の縦割り・既得権の打破など「改革」の実行である。菅氏が官房長官当時から進めてきた携帯電話料金の引き下げが、「改革」のシンボルとして注目されるだろう。

 菅氏の理屈はこうだ。日本の携帯電話市場は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社がほぼ独占状態にあり、巨額の収入を得ている。国際比較では日本の料金の高さが目立ち、各社とも営業利益は2割にも上るという。国民の財産である電波が割り当てられているのだから、利益は料金引き下げの形で国民に還元すべきだ――。

 正論ではあるが、携帯電話会社や総務省内には異論もある。今後、次世代ネットワークの「5G」に向けて巨額の投資が必要となり、携帯電話会社の利益はそれへの投資に充てるべきだというのである。菅氏が主張する当面の料金引き下げによる利用者への還元か、将来のデジタル社会に向けた投資資金の確保か。議論のあるところだ。

 菅氏が掲げる「政治主導」は、政治家が大衆受けする政策をゴリ押しすることにつながりかねない。当面の料金引き下げと将来を見据えた投資との兼ね合いを国民に説明しながら、政策を前に進めることができるのか。携帯料金問題は菅首相の政治手腕を測る試金石となる。

民主主義の普遍的価値観についてどう語るか

 最後に長期の戦略やビジョンづくりだが、これは菅首相が不得意とするところだ。

 米国と中国の対立が貿易摩擦から知的所有権や安全保障などに拡大し、覇権争いの様相を見せてきたなかで、日本の立ち位置が問われる。「米中双方と良好な関係を維持する」といった対応では、米国の理解は得られないだろう。

 日米同盟の意味を踏まえて、日本の外交方針である「自由で開かれたインド太平洋」戦略を構築し、中国には言うべきことを言っていく。香港の人権状況に対して積極的に発信していくことも必要になってくる。

 人権や法の支配といった民主主義の普遍的価値観について、菅首相がこれまで体系立った発言をしたことはないが、国際会議や首脳会談では「菅氏の持論を聞きたい」という声が高まるのは確実だ。それにどう答えるのか。菅首相にとって高いハードルだ。

 理念という点では、説明責任をどう果たすかという民主主義の本質を菅首相がどう考えているかが問われる場面も出てくる。

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筆者

星浩

星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト

1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。

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