衆院議員の任期満了まであと1年。新首相の胸のうちは……
2020年09月21日
菅義偉内閣がスタートしました。衆院議員の任期までわずか1年での新内閣誕生ということもあり、永田町の関心は、新内閣の政策にもまして、新首相がいつ衆議院を解散して総選挙にうってでるかに集まっています。
菅首相は「仕事をしたい」とコメントしているように、まずは内閣として実績を残したい考えを示しています。他方、この内閣で総選挙を迎えることは自明であり、選挙戦を意識した組閣という観点から見ると、新しい発見もあります。
今回は、菅内閣における総選挙について整理するとともに、「ポスト安倍」の総選挙にのぞむ与党、合流新党が旗揚げするなど再編が進む野党が選挙にむけて抱える課題について論じたいと思います。
菅内閣の閣僚発表のニュースを見ながら筆者が思い浮かべたネーミングは「安全第一内閣」でした。上川陽子法務大臣をはじめ4人が再登板、河野太郎行革大臣をはじめ3人がスライドと、実績と安定感のある人を起用。また、新入閣のうち、岸信夫防衛大臣は安倍晋三氏の実弟、野上浩太郎農水大臣は安倍政権で官房副長官をつとめるなど、堅実なキャリアのある人が目立ちます。
マスメディアは「政策遂行のための最適人材登用」「安倍政権の継承」などと論評しましたが、筆者はそれに加えて、閣内から不祥事を出したくないという菅首相の強い意志の表れという風に捉えました。
思い返すまでもなく、8年近く続いた第2次以降の安倍内閣では、閣僚や閣僚経験者の不祥事が後を絶ちませんでした。
安倍前首相に直接関わる「森友」「加計」「桜を見る会」の問題はさておき、古くは小渕優子経産大臣(当時・大臣辞職)の違法献金問題、松島みどり法務大臣(当時・大臣辞職)のうちわ問題、甘利経済再生大臣(当時・大臣辞職)による口利き疑惑をはじめ、今村雅弘復興大臣(当時・大臣辞職)の失言、櫻田義孝五輪担当大臣(当時・大臣辞職)の不適切発言、菅原一秀経済産業大臣(当時・大臣辞職)の公選法違反疑惑、そして河井克行前法務大臣と妻案里参院議員の逮捕と、多くの不祥事がありました。
政権はかわりましたが、森友問題における近畿財務局職員の自殺は依然、世間の注目を集め、河井夫妻の公判は進行中。ジャパンライフ問題では、同社の宣伝材料にも使われたとして加藤勝信厚労大臣(当時・現官房長官)の名前があがるなど、「安倍内閣の負の遺産」への対応が懸案になっているなか、これ以上新たな不祥事を出さないという決意が、今回の組閣人事にはしっかりと現れているように思います。
まずは安全第一の内閣をつくったうえで、では菅首相はいつ、衆議院の解散総選挙という勝負に出るのか。考えられるシナリオは無数にありますが、大きく分けて①年内(もしくは年明け早々)に行う、②通常国会で予算を通してすぐの来春、③来年の夏から初秋にかけて――の三つが考えられるでしょう。
以下、三つについて、具体的に見ていきます。
年内(もしくは年明け早々)の解散・総選挙には、二階俊博幹事長や麻生太郎財務大臣らが言及するように、根強い噂があります。実際、低調だった安倍内閣の支持率が退任表明後は急上昇、菅新内閣の支持率も60〜70%と上々です。政権への支持は、ふつう就任直後が最も高く、時がたつにつれて低下する傾向がありますから、支持が高いうちに解散総選挙に踏み切るというのは、極めて自然の判断でしょう。
問題は新型コロナの感染状況ですが、秋以降どうなるか不透明ではありますが、春から夏にかけての状況と比較すると、現段階では社会が落ち着きを取り戻していることや、合流新党が立ち上がったばかりの野党の選挙準備が遅れていることも、政権にすれば好材料です。
具体的な「公示・投開票」の日程として、「10月13日ー25日説」は遠のいたと言われていますが、国会周辺ではいま、「10月20日ー11月1日(大阪都構想住民投票の投票日)」、「11月10日ー22日」、「11月24日ー12月6日」、「12月1日ー13日」が取りざたされています。
「通常国会で予算が通過した後」の解散は、菅内閣として具体的な成果を掲げて選挙をするというシナリオです。
菅首相が打ち出した携帯電話料金ならびに電波料の見直しや、デジタル庁の創設といった政策は、いずれも政策実現にかかる時間的コストが比較的少なく、スピーディーにいけば年内にも基本的な指針の策定や準備室の設置などが可能です。それらを盛り込んだ予算を成立させ、政策の実現が見えた時点で、解散総選挙に踏み切るというわけです。
具体的には、3月後半の予算通過直後に衆議院を解散。3月23日公示ー4月4日投開票、3月30日公示ー4月11日投開票などの日程が考えられます。ただし、選挙協力を行う公明党との関係を考えれば、7月22日に任期満了を迎える都議会議員選挙を考慮する必要があり、細かい日程調整は必要になるでしょう。さらにこの頃には、五輪開催の可否や河井夫妻の公判の目処がついている可能性も高く、不確定要素を多く抱えてもいます。
来年の夏から初秋にかけては、衆議院の任期満了が迫っていることから「追い込まれ解散」として、一般的には好まれません。ただし今回は、安倍内閣が退陣し菅内閣が誕生してからわずか1年であること、コロナ禍で制約が多かったことを踏まえれば、「追い込まれ」と見る向きは少ないでしょう。
通常国会終了時(もしくはその後)の解散となると、
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