[206]病室、菅義偉氏の自民党総裁選出馬会見、『自己責任という暴力』、退院……
2020年09月23日
9月2日(水) 規則正しい生活。10年前に「報道特集」に僕が加わることになった当時のプロデューサーで現在は山形にいる齋藤雅俊氏より著書が送られてきた。『自己責任という名の暴力~コロナ禍にみる日本という国の怖さ~』(未来社)。ちょうど読む本を探していたのでいいタイミングだった。
病室では、朝・昼・夕と決められた時間に、決められたカロリー数の食事が運ばれてきて食べる。あとは決められた時間に検温と血圧等の測定。決められた時間に抗生剤を点滴で入れる。点滴をやっている間はシャワーが使えないので、それが厄介なくらいであとは快適だ。
実は沖縄の故・大盛伸二さんの四十九日の法要に行く計画を立てていた。6日の写真家・石川真生の「大琉球」写真展最終日に駆けつけて、その後に大盛家にうかがう予定が狂ってしまった。予約していたホテルと航空便を全部キャンセルする。本当に残念だ。
17時から菅義偉氏の自民党総裁選挙出馬会見をテレビでみる。会見場は滅茶苦茶に密な状態のように見える。もはや自民党の各主要派閥の支持が雪崩をうつような形で菅氏に行っている現実がある。つまり、これから起きることは壮大な「出来レース」である。
冒頭発言曰く「国難にあって政治の空白は許されない。安倍政権を支えた者として、今なすべきことは何か熟考し立候補することを決意した。全身全霊で安倍政治を継承し、さらに前に進めていくために尽くす覚悟。私の原点は、雪深い秋田の農家の長男。就職のために上京し町工場で働き始めたが、2年遅れで法政大学へ。国政をめざし47歳で当選。まさにゼロからのスタートだった。世の中には数多くの当たり前でないことがまだ残っている……」。聞きながらメモをとっているが、途中から虚しくなってきた。
その後、報道陣との質疑。どうでもいいような質問がダラダラ続いた後に、膳場貴子キャスターがあてられて、森友・加計・桜を見る会など安倍政権の「負の遺産」の説明について、国民は納得していないが、再調査の意向はどうかを質した。その答えはおそらく用意していたのだろうが、ゼロ回答。つまりすでに結論が出ているので見直しのつもりはないという素っ気ないものだった。欧米の記者会見ならば、そこで追加質問や他社のフォローアップがあるものだが、日本型記者会見の異様さは、誰も声をあげないことだ。
その後も質疑が続き、打ち切ろうとしたところ、フリーランスの記者が怒声を飛ばしていた。「出来レースじゃないですか。大手のメディアしか、顔をみてしかあてていない」「横浜をカジノ業者に売り渡すんですか」。その後、東京新聞の望月衣塑子記者があてられた。「総裁になっても、今日の会見のようにきちんと番記者の質問に応じるつもりはあるのか?」。
望月vs菅官房長官については、周知のように官邸や同業他社による質問妨害や嫌がらせの経緯があるので、望月質問も多少ちからが入って空回り気味のところもあったのだが、菅氏は「会見は限られた時間の中でやっている。質問も早く結論を絞って聞いてもらえれば答えられる」という趣旨の答えで、完全にはぐらかしていた。この答えに呼応して記者席から嘲笑を思わせるような笑い声が聞こえた。やれやれというか、こういう輩がいる限り政治報道は変わらないだろう。これが総裁選出馬会見の今のありのままの姿だ。
9月3日(木) 規則正しい生活。「クレスコ」の原稿を書く。安倍政権下の7年8カ月のあいだに教育現場で何がどのように変わってしまったのかについて。
NHKのBSをみていたら故・大杉漣がスペインでフラメンコに挑む姿を追った過去の番組、同じくスペインの地で乗馬を愛する俳優の故・宇津井健さんの姿を追った過去の番組と再放送を続けてみてしまった。すばらしい番組だった。品格ある生き方とは何かをみせられた思いがした。
あしたの午後、病院にプロデューサーらが来ることになる。点滴の針を取りかえる機会にシャワーを浴びる。気持ちいい。
9月4日(金) 規則正しい生活。医師の説明では順調に回復しているので、近く退院の見通しだと伝えられる。朝日新聞の世論調査結果に多少驚く。安倍政権の7年8カ月の評価で7割の人が「評価する」と。次の首相にふさわしいのは菅氏がトップの38%で、石破氏を抜き去った。
13時からNHKのBSで、コロナ時代に識者に聞くシリーズで、エマニュエル・トッドへのインタビューをみる。
15時からT、Aと面会。医師も立ち会って病状説明をしてもらう。大病院はコロナ禍の影響で
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