メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

規則正しい生活

[206]病室、菅義偉氏の自民党総裁選出馬会見、『自己責任という暴力』、退院……

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

9月2日(水) 規則正しい生活。10年前に「報道特集」に僕が加わることになった当時のプロデューサーで現在は山形にいる齋藤雅俊氏より著書が送られてきた。『自己責任という名の暴力~コロナ禍にみる日本という国の怖さ~』(未来社)。ちょうど読む本を探していたのでいいタイミングだった。

 病室では、朝・昼・夕と決められた時間に、決められたカロリー数の食事が運ばれてきて食べる。あとは決められた時間に検温と血圧等の測定。決められた時間に抗生剤を点滴で入れる。点滴をやっている間はシャワーが使えないので、それが厄介なくらいであとは快適だ。

 実は沖縄の故・大盛伸二さんの四十九日の法要に行く計画を立てていた。6日の写真家・石川真生の「大琉球」写真展最終日に駆けつけて、その後に大盛家にうかがう予定が狂ってしまった。予約していたホテルと航空便を全部キャンセルする。本当に残念だ。

 17時から菅義偉氏の自民党総裁選挙出馬会見をテレビでみる。会見場は滅茶苦茶に密な状態のように見える。もはや自民党の各主要派閥の支持が雪崩をうつような形で菅氏に行っている現実がある。つまり、これから起きることは壮大な「出来レース」である。

 冒頭発言曰く「国難にあって政治の空白は許されない。安倍政権を支えた者として、今なすべきことは何か熟考し立候補することを決意した。全身全霊で安倍政治を継承し、さらに前に進めていくために尽くす覚悟。私の原点は、雪深い秋田の農家の長男。就職のために上京し町工場で働き始めたが、2年遅れで法政大学へ。国政をめざし47歳で当選。まさにゼロからのスタートだった。世の中には数多くの当たり前でないことがまだ残っている……」。聞きながらメモをとっているが、途中から虚しくなってきた。

菅義偉官房長官(当時)の自民党総裁選立候補会見=2020年9月2日拡大菅義偉官房長官(当時)の自民党総裁選立候補会見=2020年9月2日

 その後、報道陣との質疑。どうでもいいような質問がダラダラ続いた後に、膳場貴子キャスターがあてられて、森友・加計・桜を見る会など安倍政権の「負の遺産」の説明について、国民は納得していないが、再調査の意向はどうかを質した。その答えはおそらく用意していたのだろうが、ゼロ回答。つまりすでに結論が出ているので見直しのつもりはないという素っ気ないものだった。欧米の記者会見ならば、そこで追加質問や他社のフォローアップがあるものだが、日本型記者会見の異様さは、誰も声をあげないことだ。

 その後も質疑が続き、打ち切ろうとしたところ、フリーランスの記者が怒声を飛ばしていた。「出来レースじゃないですか。大手のメディアしか、顔をみてしかあてていない」「横浜をカジノ業者に売り渡すんですか」。その後、東京新聞の望月衣塑子記者があてられた。「総裁になっても、今日の会見のようにきちんと番記者の質問に応じるつもりはあるのか?」。

 望月vs菅官房長官については、周知のように官邸や同業他社による質問妨害や嫌がらせの経緯があるので、望月質問も多少ちからが入って空回り気味のところもあったのだが、菅氏は「会見は限られた時間の中でやっている。質問も早く結論を絞って聞いてもらえれば答えられる」という趣旨の答えで、完全にはぐらかしていた。この答えに呼応して記者席から嘲笑を思わせるような笑い声が聞こえた。やれやれというか、こういう輩がいる限り政治報道は変わらないだろう。これが総裁選出馬会見の今のありのままの姿だ。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

金平茂紀の記事

もっと見る