松下秀雄(まつした・ひでお) 「論座」編集長
1964年、大阪生まれ。89年、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸、与党、野党、外務省、財務省などを担当し、デスクや論説委員、編集委員を経て、2020年4月から言論サイト「論座」副編集長、10月から編集長。女性や若者、様々なマイノリティーの政治参加や、憲法、憲法改正国民投票などに関心をもち、取材・執筆している。
朝鮮学校生への「経済制裁」を撤回せよ
「保守」であるはずの安倍晋三政権はその一方で、「1億総活躍」のようなキャッチフレーズを掲げてきた。
みんなが社会に参加し、活躍できる環境を整える。「リベラル」とか「多様性」を重視する人たちがめざす社会像に近いようにもみえる。けれども、私には羊頭狗肉としか映らなかった。
理由はいろいろあるけれど、そのひとつが朝鮮学校をめぐる対応である。
安倍政権は、高校無償化や幼児教育・保育無償化の対象から、朝鮮学校やその幼稚園を外した。コロナ禍で困窮する学生に支給する「学生支援緊急給付金」からも、朝鮮大学校生を除外した。自治体がみずからの判断で交付してきた朝鮮学校への補助金も、交付を再考するよう促す通知を出した。
その理由として、北朝鮮による拉致問題に進展がないことや、北朝鮮と密接な関係がある朝鮮総連が朝鮮学校の運営に影響を及ぼしていることなどを挙げている。
もちろん、拉致は断じて許されない重大事件である。けれど、朝鮮学校生は北朝鮮の指導者でも拉致の実行犯でもなく、この日本の社会でともに暮らす子どもたちだ。その子どもたちを「敵国の手先」であるかのようにみなし、経済制裁を加える……。安倍政権がやってきたのは、そういうことにほかならない。
偏狭なナショナリズムにとらわれた安倍政権は幕を下ろした。では、菅義偉政権では変わるのか。
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