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デジタル庁に忍び寄るアマゾン~国家の機密情報や国民の個人情報は大丈夫か?

菅政権「デジタル改革」の罠(1)

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

「行政の縦割りを打破し規制改革を断行するための突破口」

 まず認識しなければならないのは、極めて深刻な事態に向かって駆け下る急坂への第一歩は、すぐ目の前、10月1日から早速踏み出されるということだ。

 この日、日本の全省庁が利用するIT基盤である「政府共通プラットフォーム」の次期基盤に米国の民間企業AmazonのAmazonWeb Services(AWS)のクラウド・コンピューティング・サービスが使われる。

 これはどういうことを意味するのだろうか。

 平井卓也氏は、デジタル改革相に就任した9月17日未明の記者会見で、コロナ対策のための10万円特別定額給付金について、問題点をこう指摘した。

 「コロナ禍でわが国のデジタル化の課題が顕在化した。特別定額給付金10万円を届けるにあたってコストが1500億円もかかったというのは、デジタルの世界ではありえない。各府省、地方公共団体が縦割りでデジタル基盤整備をしているために、地域や分野横断での情報活用が進んでいない」(ABEMATIMESから引用要約)

 私に入ってきた情報では、この問題意識は菅首相も共有しており、デジタル庁創設を発想した要因のひとつになった。

 たしかに給付金を自治体に配るのに、事務費が正確には1458億7900万円もかかったのでは「何か無駄があるのでは」と思われても仕方ない。このような事態を避けるために、各府省や地方公共団体がそれぞれ縦割りで築いている「デジタル基盤」をなくしていき、まさに統一された「政府共通プラットフォーム」にチェンジしていこうということだ。

 東京有数の繁華街、渋谷駅内外の再開発をイメージしていただきたい。古くなった駅構内と周辺を統一されたコンセプトの下に新しく構築し直していく作業だ。地上と地下で構築されつつあるこの作業を、デジタルの世界で中央省庁からスタートして将来的には各自治体にも広げる。こうして、共通のコンセプトの下にITの統一共通プラットフォームを全国に張り巡らせてしまおうという計画だ。

 菅首相自身、9月23日の関係閣僚会議で、その狙いを一言で言ってのけている。

 「(デジタル庁は)行政の縦割りを打破し規制改革を断行するための突破口」「国、自治体のシステムの統一・標準化、マイナンバーカードの普及促進を一気呵成に進める」(9月23日付朝日新聞夕刊)

 狙いは明確であり、これが国民の利便性アップにつながるなら歓迎すべき政策と言えるだろう。

 しかし、菅首相のこのアグレッシブな姿勢も、デジタル化政策の下に横たわる巨大な前提を考えに入れると、歓迎すべく挙げた手を降ろさざるをえない。

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。最近著に『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)。その他の著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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