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ありゃあ、とんでもない茶番だったぜ

[207]前川喜平元文科事務次官、自民党総裁選、映画『はりぼて』試写会……

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

9月9日(水) アメリカ大統領選挙の取材の見通しをそろそろつけなければならないなあと思う。コロナ禍のあおりを食って、民放テレビ局には、局ごとに、いろいろな感染回避策があるのに加えて、濃淡の差が顕著なユニークな決め事が多くてウンザリすることが多々ある。けれども、もうそんなことは言っていられないのだ。一体誰のために僕らは取材しているのか。取材そのものを放棄しては何にもならない。そこを忘れてはいけない。

 早稲田大学の授業とゼミのシラバスの改訂作業。大学という教育研究機関は、コロナ禍でそのありようの本質的再考を突きつけられ続けているのに、当事者たちはそのことにかなり鈍感なのではないか。

9月10日(木) ベラルーシ情勢が大変なことになっている。ノーベル文学賞作家のスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの安否が世界の注目を集めている。ベラルーシ当局から拘束されるのではとの危機感を共有した同国駐在の各国大使らが、彼女のミンスクの自宅に駆けつけてボランタリーに「護衛」しているのだ。素晴らしい。ドイツ、スウェーデン、リトアニア、チェコ、ポーランド、スロバキア等の大使が彼女の自宅に集まっている写真がFBに掲載されていた。

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ拡大スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ
 9月9日に発表されたというアレクシエーヴィチの声明文のおしまいの数行は鬼気迫る内容だった。ロシアの知識人たちの沈黙に怒っている。そして見知らぬ訪問者の威嚇にも言及している。

 <……それから、ロシアのインテリたちに呼びかけたい。昔の慣習どおり、そう呼ぶことにしましょう。どうして黙っているのですか? 私たちの耳には、ごく稀にしか支援の声が届いてきません。どうして黙っているのですか、小さな、誇り高い民衆が踏みにじられているのをその目で見ているのでしょう? 私たちは、まだあなたたちの兄弟です。わが民衆にはこう言いたい。愛しています、と。あなたたちを誇りに思います、と。ほら、また知らない誰かがドアのベルを鳴らす……>

 偏愛する人形作家・井桁裕子さんの展示『風の世紀』を見に行く。恵比寿のギャラリー、LIBRARIE6/シス書店というこじんまりした画廊。実はおととい、この画廊に来たら何と休館日だった。それで満を持してやって来たのだ。井桁さんの作品には、孤高の品位がある。精神の貴族主義。澁澤龍彦に通じる気高さだ。井桁作品は、勝手に言わせてもらえれば、ハンス・ベルメールの作品の持つ品位と通じている。裸形の品位。20点以上の作品をみていて、作品の醸し出すまがまがしい清冽さに圧倒された。

井桁裕子展会場にて拡大井桁裕子展「風の世紀」にて=東京都渋谷区恵比寿のLIBRARIE6/シス書店、撮影・筆者

 その後、17時から今週の「報道特集」用の取材=官邸官僚の問題の取材で、前川喜平元文科事務次官にインタビュー。ところが局側の諸事情から、リモート取材にしてほしいと。ええっ? 自宅から近い新横浜のホテルのラウンジからオンラインでつないでの前川氏へのインタビューとなる。

前川喜平元文科事務次官拡大前川喜平・元文科事務次官

 前川氏の実体験に裏打ちされた官邸官僚、忖度官僚論には強い説得力を感じざるを得ない。2016年の文化庁長官人事での官邸による人事案ひっくり返しの実例や、和泉洋人首相補佐官の優秀な「幇間」ぶり、そして最後は官邸によるマスメディアのコントロールと、それを跳ね返すべき記者たる者の責務などについて熱く語っていただいた。

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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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