デジタル庁初代長官は竹中平蔵氏!?
菅政権「デジタル改革」の罠(3)
佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長
郵政民営化と竹中・菅ライン
竹中氏が日本の政界に躍り出てきたのは2001年に小泉純一郎政権の経済財政政策担当相に就任してからだ。この時IT担当相も兼務しているが、その後金融や郵政民営化も担当している。
その竹中氏の名前が社会に広まった最初の大きいネオリベ政策は、規制緩和の名の下に遂行した労働者派遣法の拡大だ。正社員ではない非正規雇用がどんどん増え、景気が悪くなるとどんどん「首切り」の対象となった。
二つ目のネオリベ政策は小泉政権の目玉である郵政民営化だ。
自民党総裁選で菅氏が新総裁に選ばれた9月14日、郵政民営化に反対し続けている元日本郵政公社常務理事の稲村公望氏は、同日付の日刊ゲンダイにこう言葉を寄せている。
「郵政民営化の本質は、『ゆうちょ』と『かんぽ』が保有する膨大な資産を国民から強奪して、外資に売り渡すことだと思っています。(略)竹中平蔵氏、そして菅(義偉)氏のような希代の拝金の謀略家の影がちらつきます。まだ闇の中で、確証はありませんが」
「菅政権では、外資と結託して大儲けを追求する”国際拝金主義”がいっそう推し進められていくことになるでしょう。自国ファーストではなく外資ファーストです。(略)国際拝金主義者の菅氏が総理になるとは、恐ろしい時代になりました」
稲村氏が日刊ゲンダイにコメントを寄せたのは、9月11日に、元三井住友銀行頭取で日本郵政初代社長の西川善文氏が死去したことがきっかけだった。
西川氏は2400億円かけて建設した「かんぽの宿」を109億円という破格の安値でオリックス不動産に一括売却しようとして大問題となり、結果的に責任を取る形で日本郵政社長を辞任した。
そして、2005年11月にこの西川氏を初代日本郵政社長に強引に内定したのが、小泉内閣で総務大臣だった竹中氏と総務副大臣だった菅氏のコンビだった。稲村氏のコメントは、西川氏起用の強引な人事に象徴されるような当時の竹中氏や菅氏の手法を批判したものだ。

郵政持ち株会社初代社長に内定し、記者会見する西川善文氏(右から2人目)。その奥に竹中平蔵総務相と菅義偉総務副大臣=2005年11月11日、東京・霞が関
郵政民営化に見られるような小泉政権のネオリベ路線は第1次安倍政権に引き継がれ、当の郵政問題も小泉内閣の郵政民営化担当相兼総務相だった竹中氏から安倍内閣の菅総務相にリレーされた。菅氏は竹中氏の路線を忠実に走り続けていたと言える。