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デジタル庁初代長官は竹中平蔵氏!?

菅政権「デジタル改革」の罠(3)

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

 東京・永田町の衆議院第2議員会館2階の議員事務所から地下の車寄せまで、その議員は、事務所職員に守られながら私の質問に対して、「知りません」という答えを繰り返した。

 民主党政権が下り坂に差し掛かった2012年春から初秋にかけて、私はこの自民党議員、二階俊博氏に関係するIT調達問題の取材にかかり切りになっていた。当時在籍していた『週刊朝日』の同年10月19日号に記事を掲載したが、驚くべきその事実を簡単に紹介しよう。

拡大自民党の二階俊博幹事長

二階幹事長とIT利権

 経済産業省の外局である特許庁は2006年7月以来、「業務・システム最適化計画」に基づいた基幹系システムの全面刷新を進めてきたが、いまだに完成していない。その原因は、最初に発注した東芝の100%子会社「東芝ソリューション」(略称TSOL)がシステム設計に失敗したことにある。

 失敗の原因ははっきりしている。TSOLが下請けに出したその企業は、システム設計など一度もやったことがなく実績ゼロだったからだ。

 TSOLは実績のまるでないこんな企業に、なぜ設計の下請けを出したのだろうか。

 ここで耳を疑うような事実を記そう。この新特許システムの入札説明会の6日前、2006年7月12日午後7時、東京・銀座5丁目のビル4階にある高級日本料理店に、TSOLの担当部長や下請け企業社長、そして当時の経済産業大臣、二階氏の政策秘書らが一堂に会したのだ。

 下座に着いたのは元受けのTSOLの面々。上座中央に座ったのは二階氏の政策秘書と下請け企業社長だった。実は、この下請け企業社長は、二階氏の有力後援者の息子だった。

 入札直前に担当大臣の政策秘書と受注企業の担当部長、その下請け企業社長という利害関係者全員が会食したという事実は、何とも申し開きのできない不祥事だろう。しかも、実績ゼロの下請け企業社長は担当大臣、二階氏の有力後援者の息子で、この有力後援者自身も下請け企業の関連会社の取締役に就いていた。

 私は何度も大阪府泉南市にある経営者の企業を訪ねたが、そこには企業の姿はなく、この社長が経営する介護施設があるだけだった。

 前回『アマゾンに日本政府のIT基盤を丸投げする菅政権~NTTデータはなぜ敗北したのか』で、NTTデータが国税庁システムを1万円入札したケースを記したが、この特許庁の基幹系システム全面刷新のケースはさらに奥深い闇を抱えている。

 TSOLはこの刷新開発を99億2500万円で落札。特許庁はこのうち24億円をシステム設計のために執行。これが何らの成果物を生むこともなく、二階氏の有力後援者関係の企業に入った。また設計の開発管理のために30億円がアクセンチュアに支払われた。つまり、合計54億円あまりの公金が、いずことも知れぬ闇の奥に消えてしまったのだ。

 10月1日から次期政府共通プラットフォームは米国企業AmazonのAWS(Amazon Web Services)クラウド・コンピューティング・サービスに移行する。発表がないためにわからないが、未開発のままの特許庁システムもそこに加わる可能性がある。

 闇の奥に消えた54憶円とともに、濃厚な疑惑もまた疑惑のままに消え去ってしまう可能性が強い。そして、言うまでもなく、日本のIT産業を衰退させてしまった大きい原因の一つは、国民の税金をドブに捨てたこのようなデタラメな入札と腐敗した政治にある。

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

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