トラッキングを通じた情報収集から自分の身を守るには
2020年09月29日
このサイトの記事「ロシアのスパイのやり口:FSBに拘束された経験者が語る「真実」」で書いたように、モスクワで拉致された経験がある。この際、筆者はコンピューターを一時、諜報機関である連邦保安局(FSB)によって押収された。4時間ほどの拘束後、コンピューターは返還されたが、その後、そのコンピューターに何かよからぬものが仕掛けられているかもしれないとの不安から、いまではそれを利用することはほとんどない。
こんな体験以降、インターネットを通じて、得体のしれない第三者が個人情報を盗んでいるのではないかという強迫観念が芽生えるようになる。そんな筆者だからこそ、2020年9月22日にアップロードされた「彼らが知っていること…いま:監視経済はますます気持ちの悪いものになっている」という記事にひかれた。書いたのは、ジュリア・アングウィンで、テクノロジーとそれに影響を受ける人々についての有意義なデータ中心のジャーナリズムを生み出すためにThe Markupという組織を創設した女性である。
彼女は、2010年8月に「ウォールストリート・ジャーナル」で始めたデジタルプライバシーに関する「What They Know」シリーズを率いた人物で、かつてマイクロソフトがウェブブラウザのプライバシー保護を潰したことや、ユーザーの年齢や収入を特定するウェブトラッキング(追跡)があったことなどを暴露してきた。そんな彼女は、この記事のなかでつぎのように指摘している。
「今日、トラッキングを通じて収集された情報は電子メールやソーシャルメディアのアカウントによって個人を特定することがより可能になっている。そして、監視はより不気味さを増し、それを止めるのがますます難しくなっている。」
こんな問題意識から、前記The Markupのデータ・ジャーナリスト、スーリヤ・マトゥが中心になって生まれたのが「ブラックライト」(Blacklight)と呼ばれる、リアルタイムのプライバシー検査ツールである。通常、目に見えないものに紫外線を照らして可視化するブラックライトにちなんでこう名づけられた。ブラックライトは、一般の人が見ることのできないインターネット監視インフラストラクチャの一部を照らすことができるというのだ。
このブラックライトにURLを入力すると、入力したウェブサイトを調べて7つの異なるタイプのプライバシーを侵害方法の有無を診断できるテストが実行され、結果が示されるのである。彼女によれば、ブラックライトを用いて8万以上の人気のあるウェブサイトをスキャンしたところ、第三者のトラッキング技術が87%に搭載されていることがわかったという。
どんなトラッキングが行われているかというと、第一に目立つのがフェイスブックのトラッキングコードの搭載である。調査したウェブサイトの3分の1がこれを利用している。これにより、「ソーシャルメディア企業はフェイスブックの壁に囲まれた庭の外にいる31億4000万人がどこに移動したかを知ることができる」のだという。フェイスブックのトラッキングピクセルはフェイスブックにログインしているかどうかにかかわらずユーザーを識別することを可能にする。同じく、調査したサイトの74%にグーグルのトラッキング技術が搭載されていた。予想どおり、グーグルの搭載割合が圧倒的に多いと言えよう。
第二に、最近急増している技術として、「セッション記録」がある
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