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大統領選挙に見る米国社会の国是をかけた争い

その混迷が今の国際社会の混乱を生んでいる

花田吉隆 元防衛大学校教授

トランプ氏は「世直しの旗手」

 米国民の半数近くが、トランプ氏以前の指導者は米国を誤った方向に導こうとした、と考えている。既に前回、2016年にさんざん議論されたことだが、それが今なお健在であるところに、これが米国の本質に触れる問題であることを示す。トランプ氏は米国社会の「世直しの旗手」なのだ。米国を誤った方向に導いたのは、リベラリスト、コスモポリタンと言われる民主党のエリートだ。権力をその手から奪い返さねばならない。

 これは米国が抱える古くて新しい問題だ。かつても同じことがあった。今起きているのはその繰り返しだ。

 米国建国の際、フェデラリストと反フェデラリストが対立したことはよく知られている。ハミルトン氏を代表とするフェデラリストは、商業利益を代弁、目を大西洋の方向に向けていた。つまり、米国の繁栄は、強い統合体の創設にあり、その統合体が他国と協調し国際主義を推進していくところにある、とする。これに対し、反フェデラリストは、農民利益を代弁、目を西部に向ける。統合は緩い形であるべきであり、他国との協調や国際主義より米国国内の発展をこそ目指すべきだ、とする。結局、この対立はフェデラリストが勝利するが、反対勢力の系譜は第3代のジェファーソン大統領、第7代のジャクソン大統領へと脈々と受け継がれていく。特に、ジャクソン大統領は、ジャクソニアン・デモクラシーの言葉があるとおり、農民こそが米国の基本であり、重心は西部に置かれるべきで、東部特権層が権力を壟断することはあってはならず、大衆こそが主権者でなければならない、とした。

 この対立が現在の米国社会にそのまま投影される。トランプ氏は言う。

 民主党を主導するリベラリストは高邁な理想を掲げ、人種平等や国際主義を言うが、東部エリートによる権力の壟断は、人種平等の名の下に白人層を不当に冷遇し、グローバル化推進により白人中間層を困窮に追いやった。

 リベラリストは言うことは立派で、国際社会の利益になるかもしれないが米国民の利益にはならない。非白人を米国社会に取り込んだはいいが、それにより社会はあらぬ方向に行ってしまった。ゲイが大手を振り、同性婚がまかり通り、教会がないがしろにされている。かつての自助を基本に据えた米国社会、家族が大切にされ、皆が勤勉に働き、教会で祈りをささげ明日の繁栄を誓う、あの古き良き米国社会はいったいどこに行ってしまったのか。

 伝統的な米国社会を支えていた白人中間層は、今や、グローバル化により見るも無残な生活に追いやられた。それは

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

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