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PEP規制の重要性:無知ほど怖いものはない

「傑出した公的役割をもつか、あるいは、そうした役割を委託された個人」による腐敗

塩原俊彦 高知大学准教授

腐敗利益にかかわるかもしれない取引の発見・防止

 突然、PEPという言葉が現われたわけではない。米国では、PEPに近い意味をもつ“senior foreign political figure”という言葉が「外国PEP」に類似した言葉として2001年1月に米財務省、国務省、連邦銀行規制機関が出した「反資金洗浄ガイダンス」のなかに登場する。その際、“senior foreign political figure”は、外国政府の執行・立法・行政・軍事・司法上の部門の上級公務員や外国の主要政党の上級幹部、外国政府によって所有された会社の上級幹部を指していた。この概念のなかには、これらの人物によって、あるいはそうした人物のために形成された会社、ビジネス、その他の実体が含まれていた。

 それだけではない。「直接の家族」(immediate family)として、本人の両親、兄弟姉妹、配偶者、子、姻戚者が定義され、「近しい仲間」(close associates)として、本人との異常なほどの近しい関係を維持していると広範囲に人々に知られている人物ないし本人に代わって実質的な国内・国際金融取引を行う立場にある者をあげている。これらの対象による腐敗利益に

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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