[4]感染第2波で始まった都市封鎖で、広がるデモ規制
2020年10月04日
9月以降、中東ではコロナが蔓延しているが、発表されている数字だけを見れば、最も深刻なのはイスラエルである。9月に入ってから陽性者が激増し、18日から3週間、自宅から1000メートル以上離れることを規制する全土都市封鎖に入った。都市封鎖は4月、5月の第1波の際に続いて2回目である。
この都市封鎖のもとで、汚職事件裁判の被告となっているネタニヤフ首相の辞任を求めるデモが続く。政府は9月末に、それまで政治的自由として外出規制に縛られないとしていたデモについても自宅から1000メートル以内に規制する法改正を行い、対立がさらに激化する様相となっている。
イスラエルでは10月1日時点の確認陽性者数は23万8452人、死者は1543人である。陽性者数では、中東で最も多いイランの44万人の半分だが、イスラエルでは8月21日に10万人になった後、9月23日に20万人を超え、約1カ月で陽性者は倍増した。直近の1カ月だけ見れば、イランよりも陽性者数は多い。死者はまだ少ないものの、これも1カ月半で倍増した。
イスラエルでの最初の陽性者は2月21日に、日本で集団感染が問題となったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を下船して帰国したイスラエル人だった。翌22日にはイスラエルを訪れていた韓国人旅行者グループ9人が帰国後に感染が判明した。イスラエルはただちに日韓に滞在した外国人の入国を拒否する措置をとった。しかし、3月末には1日の新規陽性者が700人を超えた。
政府は3月下旬から約1カ月間の非常事態宣言を出し、自宅から100メートル以上離れる外出を禁じ、飲食店の閉店、小学校から大学までの教育機関を休校させるなど厳しい措置をとった。それによって一時新規感染者は減少し、5月初めに新規の陽性者は100人を下回った。
ネタニヤフ首相は「コロナ封じ込め成功」宣言を出し、「経済再開」のための規制解除を行った。一時は世界的にも対策が功を奏した例として注目された。しかし、規制を解除すると、6月中旬に1日の新規陽性者が300人を超え、感染増加に転じた。
第1波での厳しい移動制限や経済活動の規制によって失業率が24%に達するなど国民生活への影響は大きかった。ネタニヤフ首相が経済を動かすためにすぐに規制を緩めた結果、感染が再燃したことについて、政府のコロナ対策の失敗として非難する声が強まった。8月上旬にイスラエル民主主義研究所が発表した世論調査では、ネタニヤフ首相のコロナ危機への対応を支持すると回答したのはわずか25%だった。
7月にはネタニヤフ首相の退陣を求めるデモが、エルサレムの首相官邸前で始まった。週末には数千人規模に膨らみ、デモ隊と警官隊が衝突した。9月に始まった都市封鎖の下でもデモはさらに激化している。
ネタニヤフ首相への批判が高まる背景には、首相の汚職問題がある。首相は2020年1月に収賄や背任の罪で起訴された。しかし、3月の総選挙を経て、5月に5期目となる首相に就任した。その直後の5月下旬、汚職事件の初公判があった。首相に対しては、イスラエルの有力新聞に対して優遇策を取る代わりに、自分に好意的な報道をするよう取り引きをもちかけたり、ビジネスマンから法外な値段の贈り物をもらったりしたという嫌疑がかけられている。
ネタニヤフ首相は右派政党「リクード」の党首で、選挙では中道政党連合「青と白」との間で政権を争ってきた。ネタニヤフ氏は検察の汚職捜査による起訴を逃れようとして2019年4月以来、3度の総選挙を行った。3月の3回目の選挙ではリクードと「青と白」はどちらも首相を擁立できず、最終的には「コロナ感染に対処するため」に両者が参加する「挙国一致内閣」の樹立で合意した。議員の3年の任期のうち、ネタニヤフ氏が最初の1年半、首相を務め、残りの1年半を「青と白」のガンツ党首(現国防相)が務めるという合意だ。「青と白」はもともとネタニヤフ氏の議員辞職を求めていたが、連立合意では妥協した。
しかし、国民の間には、首相が「刑事被告人」となったことで、
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