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イスラエルで深刻化するコロナ感染、汚職で刑事被告人の首相主導の対策に高まる批判

[4]感染第2波で始まった都市封鎖で、広がるデモ規制

川上泰徳 中東ジャーナリスト

 9月以降、中東ではコロナが蔓延しているが、発表されている数字だけを見れば、最も深刻なのはイスラエルである。9月に入ってから陽性者が激増し、18日から3週間、自宅から1000メートル以上離れることを規制する全土都市封鎖に入った。都市封鎖は4月、5月の第1波の際に続いて2回目である。

 この都市封鎖のもとで、汚職事件裁判の被告となっているネタニヤフ首相の辞任を求めるデモが続く。政府は9月末に、それまで政治的自由として外出規制に縛られないとしていたデモについても自宅から1000メートル以内に規制する法改正を行い、対立がさらに激化する様相となっている。

 イスラエルでは10月1日時点の確認陽性者数は23万8452人、死者は1543人である。陽性者数では、中東で最も多いイランの44万人の半分だが、イスラエルでは8月21日に10万人になった後、9月23日に20万人を超え、約1カ月で陽性者は倍増した。直近の1カ月だけ見れば、イランよりも陽性者数は多い。死者はまだ少ないものの、これも1カ月半で倍増した。

 イスラエルでの最初の陽性者は2月21日に、日本で集団感染が問題となったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を下船して帰国したイスラエル人だった。翌22日にはイスラエルを訪れていた韓国人旅行者グループ9人が帰国後に感染が判明した。イスラエルはただちに日韓に滞在した外国人の入国を拒否する措置をとった。しかし、3月末には1日の新規陽性者が700人を超えた。

 政府は3月下旬から約1カ月間の非常事態宣言を出し、自宅から100メートル以上離れる外出を禁じ、飲食店の閉店、小学校から大学までの教育機関を休校させるなど厳しい措置をとった。それによって一時新規感染者は減少し、5月初めに新規の陽性者は100人を下回った。

イスラム教シーア派の聖地コム Irtiza Hashmi/Shutterstock.com拡大2020年5月、エルサレムの嘆きの壁で Gil Cohen Magen/Shutterstock.com

 ネタニヤフ首相は「コロナ封じ込め成功」宣言を出し、「経済再開」のための規制解除を行った。一時は世界的にも対策が功を奏した例として注目された。しかし、規制を解除すると、6月中旬に1日の新規陽性者が300人を超え、感染増加に転じた。

 第1波での厳しい移動制限や経済活動の規制によって失業率が24%に達するなど国民生活への影響は大きかった。ネタニヤフ首相が経済を動かすためにすぐに規制を緩めた結果、感染が再燃したことについて、政府のコロナ対策の失敗として非難する声が強まった。8月上旬にイスラエル民主主義研究所が発表した世論調査では、ネタニヤフ首相のコロナ危機への対応を支持すると回答したのはわずか25%だった。

 7月にはネタニヤフ首相の退陣を求めるデモが、エルサレムの首相官邸前で始まった。週末には数千人規模に膨らみ、デモ隊と警官隊が衝突した。9月に始まった都市封鎖の下でもデモはさらに激化している。

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

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