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パンケーキとグループ・インタビュー/菅首相と政治部記者の歪んだ関係

内閣記者会の記者たちは、もう一度初心に立ち返り真実を追求する志を取り戻すべきだ

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

「本当の理由」を言えない菅首相

 菅首相の任命拒否が孕む大きい問題点の第二は、首相が拒否した真の理由だ。

 今回任命を拒否された6人の学者に共通している点は、第2次安倍政権時の安倍首相や菅官房長官が強引に進めてきた施策に反対を表明していたことだ。

 芦名定道・京大大学院教授や宇野重規・東大教授、岡田正則・早大教授、小澤隆一・慈恵医大教授、加藤陽子・東大大学院教授の5人はそろって集団的自衛権を含む安全保障関連法制への反対を表明しており、松宮孝明・立命館大大学院教授は「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織的犯罪処罰法に強く反対した。

 6人は、反対する「学者の会」の呼びかけ人を務めたり、野党が推薦する公述人や参考人として国会に呼ばれたりしており、政治参加に積極的だった。

 ここまで文脈を追ってくれば誰もが推測できるように、菅首相が6人を任命しなかった真の理由は、第2次安倍政権の主要施策に目立って反対した学者たちのパージだろう。

 しかし、菅首相はこの真の理由について言及することはできないだろう。安倍前政権への親密度で知られる田崎史郎氏は10月6日放送のテレビ朝日の番組でこう語っている。

 「政府の弱点があって。6名の(拒否)理由を明かせないのが弱いところ。多少、外郭的な理由でも説明してくれれば腑に落ちるんですが」

 田崎氏は、安倍政治の継承を公言する菅首相の応援団でもあると見られるが、この言葉は正直な感想だろう。安全保障関連法制などに反対したから任命を拒否した、という理由を明らかにした瞬間、菅首相の命運は尽きてしまう。

 6人は憲法や政治学、歴史学などを専門分野とする高名な学者であり、それぞれの主張と行動は自らの研究と深い思索に基づいて発現してきたものだ。この主張と行動が拒否の理由ということであれば、それこそ「学問の自由」を蹂躙したことになる。

 恐らくは菅首相の喉から出かかっているだろうが、この本当の理由を言うことは、反対意見につながる学問の存在は認めないという政治姿勢を表明することになる。

 これを逆に言えば、まさにパンケーキの裏に隠された菅首相の真の姿が透視図のように浮かび上がってくる。

 そして、この第二の問題点に付随して生じてくる第3の問題点は、菅首相の真の姿を浮かび上がらせるべきマスコミ各社、そして記者自身の問題だ。

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。最近著に『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)。その他の著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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