学術会議を闇討ちした菅政権のスタートダッシュ
2020年10月11日
問題1
「日本学術会議の会員任命は、学術会議が推薦した通りに首相が形式的な発令を行う」(1983年当時の政府見解)
「任命権者たる首相が学術会議推薦の通りに任命しなければならないわけではない」(2018年ごろの内閣府見解)
この二つの見解は、一貫していて矛盾しないという。その理屈を述べよ。
問題2
政権の「個別の人事」に疑念を抱いた野党の要求で国会審議が開かれた。「個別」の6人の名前も業績も明らかになっているのに、政権側は「個別の人事に関することでコメントは控える」と繰り返した。
政権側の答弁の意味と意図、国会の意義について述べよ。
日本学術会議の会員候補6人が2020年秋、菅義偉首相から任命されなかった問題は、日々、国会や記者会見で、禅問答のような、難解な哲学論のようなやりとりが続いている。
騒動の理由は単純なものだ。改選される会員105人の名簿を学術会議が提出したところ、99人は会員名簿に掲載されたが、6人だけが排除されていた。
推薦通りに任命されなかったのは初めてだったので学術会議は仰天したが、政権は6人任命拒否の理由を一切開示せず、闇討ち人事の印象を与えた。
菅氏が首相就任後、主体的に動いて物議を醸したのは初めてだが、安倍晋三・前首相時代の官房長官として、安倍氏が放置したまま去った「オトモダチ疑惑」にも深く関与してきた過去を振り返らざるを得ない。
森友学園や加計学園に有利になるように側近や官僚を忖度させた疑惑、証拠となる公文書を改竄させた疑惑。内閣法制局長官に慣例とは違う人物を登用し、集団的自衛権を容認させようとした問題。桜を見る会の招待客を膨らませ続け、事実上、後援会サービスになっていた問題。高検検事長の定年を無理に延ばしてまで検事総長の座につけようとした問題……。
これらには、いくつかの共通点があった。
首相のような権力者になったら襟を正し、かえって「オトモダチ」とは疎遠な関係を保つ――といった美しい日本の伝統を破壊した。側近も、経済界も、学者も、ジャーナリストも、オトモダチで固めることに躊躇することがなかった。
さらに、これらの問題が表沙汰になったのは、報道や告発、野党側からの指摘が発端で、政権側から国会や国民に発信されたものではなかったということだ。
逆に言えば、野党やジャーナリズムや告発者がいなければ、好き放題、知らぬ存ぜぬで通ってしまったかもしれない問題だった。
たまたま疑惑が明らかになった時は、「憲法や法律違反には当たらない」「指摘は当たらない」「個々の人事の件にはコメントしない」とひたすら繰り返し、時間が経つのを待つ。これらの決まり文句を「丁寧な説明」と定義し、いつのまにか「議論は尽くされた」と総括する。
こんな性格の前政権を引き継いだ菅氏は、果たしてどのような初動、スタートダッシュを見せてくれるかと楽しみにしていたら、オトモダチ疑惑の続編として日本学術会議問題が勃発した。
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