「6人除外」問題は日本学術会議を検証する機会
学術会議の権威も菅政権の権威もともに失墜してしまう事態を収拾するために
田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授
菅義偉政権が9月中旬の発足から1カ月を待たず、日本学術会議が推薦した会員候補6人が任命されなかった問題をめぐり、苦境に立っている。
そもそもこの件は、政権側の恣意的な法解釈によって、一気に強引に押し切れるような案件ではない。対応次第では、菅政権が得ているせっかくの高い国民的支持が失われかねないおそれがある。出直したほうがいい。

首相官邸前で日本学術会議が推薦した会員候補が任命されなかった問題について抗議する人たち=2020年10月6日夜、東京・永田町
政府の対応に募る不信感
一体、この問題をこのように扱えば、世論の分断と反発を招くことは、十二分に予想できたはずだ。もし今回の混乱が「想定外」であったとすれば、菅政権がいまの日本の世論の動向を正確に読み取る力が乏しかったと言わざるを得ない。
さらに、今回のように世論の動きを洞察することができないとすれば、今後の政権運営にも不安感がつきまとうことになる。いずれにせよこの局面は、“首相の愚直さ”によって打開するほかはないと思う。
政府(内閣府)は10月6日、2018年に学術会議事務局が作成した会員任命に関する内部文書を公表した。この文書では、会員は特別職の国家公務員であることを踏まえ、首相が学術会議の推薦通りに会員を任命する義務があるとまでは言えないとしており、会議の人事への政権の介入を正当化している。
しかし、こうした見解を公表するなら、今回の人事を行う前にするべきだろう。多くの議論を経てならともかく、ことが問題化した後に公にされても、不信感がさらに強まるだけである。