「6人除外」問題は日本学術会議を検証する機会
学術会議の権威も菅政権の権威もともに失墜してしまう事態を収拾するために
田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授
「形式的行為」と明言した中曽根首相
1983年、当時の中曽根康弘首相は国会で、学術会議の会員の任命が「政府の形式的行為」であることを明言した。形だけの推薦制であり、学会から推薦された人は拒否しないということだ。拒否しないということだ。翌84年にも同様の発言を繰り返している。
当時、私は衆議院議員だったが、この発言によって中曽根首相に対する信頼感が強まったことを記憶している。それまで、中曽根首相が学問の自由、学術会議の独立性や中立性の維持に熱心な人だとは思っていなかったから、なおさらだった。
経歴をたどれば、菅首相は当時、中曽根内閣の小此木彦三郎通産相の秘書官だった。小此木氏は中曽根派の重鎮として、首相の判断に全面的に同調していたはずである。当時の菅氏はどう考えていたのだろうか。
学術会議が収まらないわけ

「学術会議任命拒否問題」野党合同ヒアリング=2020年10月6日午前11時8分、国会内、
現在、野党は6人が任命されなかった理由を説明するよう強く要求している。それは当然の要求といえるが、その要求を受け入れても菅政権は苦境を打開できないだろう。ましてや、説明を拒否したり、自由な記者会見を回避したりすれば、事態は悪化する一方に違いない。
菅首相が強引に今の対応を貫いても事態が解決しないと思われるのはなぜか? それは学術会議全体がそれでは収まらないからだ。むしろ、混乱はより広く深く拡大するだろう。
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