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「下部構造」がないからアイデアも出ない~2大政党が育たない理由

政権交代、首相交代……。松井孝治が思うこと(中)

松井孝治 慶應義塾大学教授・元官房副長官・創発プラットフォーム理事

「本質的な作戦立案に精力を費やさない」、戦時中と変わらぬ習性

 ――自民党1党支配の時代であれば、シンクタンク機能をもつのが霞が関だけでも困らなかったのかもしれませんが、それでは政権交代可能な政治勢力をつくれませんよね。

 その霞が関も劣化が指摘されています。「ブラックさ」が増し、霞が関に人が集まりにくくなってきている。集まった人たちをむやみに、むだな仕事に使っている。

 ほかの国ではコロナを封じ込めながら経済を殺さないためにどういう工夫ができるのか知恵をめぐらせているのに、日本では毎日、国会に呼び出され延々と問題点を指摘され、解決策を考える時間が与えられない。わけのわからないところに精力を費やし、本質的な作戦を練ることに費やさないのは、戦時中から変わっていないんじゃないか。少なくとも役人を有効活用して、まじめな若い人たちがそこに入ってくる仕組みを崩さないようにしなければ。

 国会を通年国会にして、会期を2つにわけたらいいんじゃないでしょうか。政府案の徹底審議は、たとえば5月までで終える。6月からは議員間の討論や党首討論、あるいは議員立法の議論を徹底的にして、行政には議会対策を休ませてあげたらいい。

 それから、役人の有効活用に加えて、それとは違うアイデアや提言を出す人を政治の世界で食わせるしかありません。政党にシンクタンクをつくる手もあるし、国会図書館とか衆参両院の調査室に専門家を集める方法もある。国会で公聴会みたいなことをやって、その専門家が「こういうアイデアはどうですか」「イギリスではこういう制度を導入したけれど、あなた方はできないのですか」と議論するんです。あるいはそういう人の知恵を借りて議員が詰めてもいい。そういう議論がなくて、スキャンダルみたいなことを追及してばかりだから情けなくて、最近は国会をみる気にもならない。

霞が関にもチームAとチームBが必要

 これは民主党政権が残した教訓でもあるけれど、「言うだけ番長」じゃなくて、制度に落とし

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筆者

松井孝治

松井孝治(まつい・こうじ) 慶應義塾大学教授・元官房副長官・創発プラットフォーム理事

 1960年生まれ。83年に旧通商産業省に入省。内閣官房に出向して首相演説の原稿を執筆し、行政改革会議で「橋本行革」の事務局を務める。2001年から12年まで参議院議員(民主党)を2期務め、鳩山内閣の内閣官房副長官、参議院内閣委員長、民主党筆頭副幹事長などを歴任する。現在は慶應義塾大学総合政策学部教授、一般財団法人「創発プラットフォーム」理事兼主幹研究員。著書に『この国のかたちを変える』『総理の原稿――新しい政治の言葉を模索した266日』。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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