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霞が関のヒラメ化抑止に、「セカンド・ボイス」を

政権交代、首相交代……。松井孝治が思うこと(下)

松井孝治 慶應義塾大学教授・元官房副長官・創発プラットフォーム理事

政権が相性のいい人を使うのは当たり前

 ――松井さんは統治機構改革や公務員制度改革にとりくんできましたが、安倍政権では、官僚の「忖度」が騒がれました。

 どこの国だって、政権中枢が自分と相性のいい人たちをチームにとりいれていくのは当然です。ぼくは内閣人事局も幹部公務員制度も必然だと思っています。

 たとえば総理とか官房長官が気に入った各省の幹部がいたら、3年とか4年、使い続けるのは、国際的にみたら当たり前のこと。政権側からすると、「おれたちは同じメンバーで歯を食いしばってやっているんだから、つきあえよ」っていうことです。でも、霞が関には年次ごとに順送りする年功序列の人事体系があって、3、4年同じ人が次官をやったりすると、「役所の次官人事の中立性を侵している」と映る。カルチャーギャップがあるように思いますね。

 一方、とくに安倍政権の後半は、大臣だけころころ代わっているんです。派閥からの推薦に応じて、できるだけ多くの人を大臣にしている。毎年ローテーションのように交代するものだから、役所や大臣によっては、幹部は大臣よりも首相や官房長官の方と昵懇で、次官と事務担当の官房副長官が人事を決め、それを菅長官に上げれば最終決定で、大臣は実質的に事後報告で関与できなくなっているという話を聞きます。「こうなりました。既に官邸も了承済みです」みたいな事後報告になっている。

 そうすると、問題は大臣を毎年代えていることにあるのかもしれない。いまの段階では、そう簡単に内閣人事局とか幹部公務員制度の評価はできません。

内閣人事局発足式が行われ看板かけをする、(左から)加藤勝信内閣人事局長、稲田朋美国家公務員制度相、安倍晋三首相、菅義偉官房長官=2014年5月30日午前、東京・永田町、代表撮影拡大内閣人事局発足式が行われ看板かけをする、(左から)加藤勝信内閣人事局長、稲田朋美国家公務員制度相、安倍晋三首相、菅義偉官房長官(いずれも当時)=2014年5月30日午前、東京・永田町、代表撮影

政治家は官僚の一面しかみない

 他方で、政治家は官僚の一面しかみていないのは事実です。自分の主張を飲み込み早く理解して、気が利いて先回りした詰めをしてくれる人はかわいいし、骨があって反発する人は使いにくい。

 それは役所や企業でも同じだと思いますけど、普通の組織では上司や先輩だけでなく同僚や部下、さらには仕事の関係先などいろんな人たちの評価や評判を集めて、多面的に評価しているわけです。「あいつは大胆な行動力には欠けるけれども、詰めは緻密で漏れがない」「彼は確かにあの上司とは相性が悪いけれど、別のタイプの人々と仕事をする限りすごく有能だからこっちで使おうよ」という議論がされて、人材が登用されている。

 けれど、安倍政権の各省幹部人事では、総理や官房長官からみて「こいつは使いやすい」という以外の情報をこなしている部局があまりなかったような気がします。それでは、上ばかりみているヒラメのように、官邸に忖度する官僚ばかりを増殖させることにつながってしまう。そんな弊害を避け、「好き嫌いで、えこひいきをしている」とみられないよう、いわゆるセカンドボイスも入れて、懐深い人事をした方がいいと思いますね。複数の目で、「上からはこうみえるけれど、別の同僚とか他の役所からはこうみえているよ」ということがちゃんと耳に入って、バランスのとれた人事ができる仕組みの工夫が必要だと思います。

 そのためには、内閣人事局を置いて一元管理している対象を絞り込む必要があるのかもしれませんね。いまは600数十人の各省幹部の人事が対象ですが、それだけの官僚を複合的に評価するのは難しい。とくに多忙な官房長官や副長官はそこまでみていられない。各省ごとに3、4人、合計で数十人程度の範囲なら、彼らは相当な幹部で、各省横断の仕事をする人が多いわけですから、結果を出す技量のみならず、「自分の役所のことだけを考えてないか」とか「独断専行じゃないか」とか、複合的に評価できるはずです。

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筆者

松井孝治

松井孝治(まつい・こうじ) 慶應義塾大学教授・元官房副長官・創発プラットフォーム理事

 1960年生まれ。83年に旧通商産業省に入省。内閣官房に出向して首相演説の原稿を執筆し、行政改革会議で「橋本行革」の事務局を務める。2001年から12年まで参議院議員(民主党)を2期務め、鳩山内閣の内閣官房副長官、参議院内閣委員長、民主党筆頭副幹事長などを歴任する。現在は慶應義塾大学総合政策学部教授、一般財団法人「創発プラットフォーム」理事兼主幹研究員。著書に『この国のかたちを変える』『総理の原稿――新しい政治の言葉を模索した266日』。

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