メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

菅政権最初の「難所」学術会議問題にみる政権の特徴と切り抜ける術

「個人が自らによって立つこと」を重視する菅首相とリベラルの融和は可能か

三浦瑠麗 国際政治学者・山猫総合研究所代表

にわかにその名が知られた日本学術会議

 推薦された会員候補のうち6人が除外されたことで、にわかに世間にその名が知られることになった日本学術会議は、さまざまな分野の学者が集う内閣府傘下の組織である。戦中の学会が国家の軍事化に対して協力的だったことから、学会のリベラル化を図ることを目的にGHQの占領時代に設立された。その呼称が適切とは思わないが、「学者の国会」とも呼ばれている。

 これまでの慣例では、会議の新規メンバーは推挙に基づいて内閣総理大臣が形式的に任命することになっていた。過去の国会答弁をみても、学問の自由の原則への配慮から、通常の行政機関とは異なり、その独立性を重視して運営されてきたことに特徴がある。しかし近年は、形式的承認に少なくとも事前調整の条件を持ち込もうとする内閣官房との間で駆け引きがあったようだ。

 本件が政治性を帯びているのは、推薦候補のうち任命の選からもれた6人に、特定秘密保護法や安保法制などの安倍政権時代の政策に反対していた過去があったからだ。除外されたのは、政権が進める政策に反対していたからではないかと、メディアもアカデミアも任命の政治化に危機感を抱いた。学問の業績に基づいて決められるべき人選が、思想・信条に基づいて決められたのではないかと憂慮する声が上がったのである。

「6人除外」への反発と政府の説明

 学界やメディア人の多くは、「学問の自由」へのあからさまな挑戦だとして政府の決定に猛反発している。政府は個々の学術研究の内容に踏み込んで判断しているわけではないと表明しており、逆にその判断に政治性があることは明らかだが、報道されている論点とはやや異なるところに力点をおいた説明が行われている。

拡大首相官邸前で、日本学術会議が推薦した会員候補が任命されなかった問題について抗議する人たち=2020年10月6日夜、東京・永田町

 すなわち、法的には任命権は内閣総理大臣にあるため、一定の任命拒否の権限もあるという主張である。過去の慣例でも、すべての推薦者を機械的に任命していたわけではなく、

・・・ログインして読む
(残り:約4455文字/本文:約6564文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

三浦瑠麗

三浦瑠麗(みうら・るり) 国際政治学者・山猫総合研究所代表

1980年神奈川県茅ケ崎市生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。専門は国際政治、比較政治。東京大学政策ビジョン研究センター講師などを経て現職。著書に『シビリアンの戦争―デモクラシーが攻撃的になるとき』(岩波書店)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)、『あなたに伝えたい政治の話』(文春新書)、『21世紀の戦争と平和 徴兵制はなぜ再び必要とされているのか』(新潮社)など。政治外交評論のブログ「山猫日記」を主宰。公式メールマガジン、三浦瑠麗の「自分で考えるための政治の話」をプレジデント社から発行中。共同通信「報道と読者」委員会第8期、9期委員、読売新聞読書委員。近著に『日本の分断―私たちの民主主義の未来について』(文春新書)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

三浦瑠麗の記事

もっと見る