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日本学術会議騒動にみるもう一つの違和感

「気高い嘘」への疑問

塩原俊彦 高知大学准教授

知識より感情を信頼するトランプ支持者

 2017年1月21日、トランプ大統領は自分の就任式に集まった人数をめぐって、マスメディアの報道が嘘をついていると批判した。この話をデイヴィスは著書のなかで紹介しているのだが、メディアは2009年のオバマ大統領の就任式の写真や数字などと比較する報道をしたのに対して、「トランプにとってこれは単なる「事実」の不一致ではなかった」と彼は書いている。「それは二つの感情の対立であった」というのである。それは、「批評家の傲慢な嘲笑」と「支持者の愛」だという。

拡大ワシントンモニュメントから見たトランプ大統領の就任式(左)と2009年のオバマ大統領の就任式
(出所)https://www.bbc.com/news/world-us-canada-38707722

 デイヴィスは、「我々が「リアルタイム」の出来事やメディアにより多く同調するようになると、不可避的に証拠よりも感覚や感情により信頼を置くことになってしまう」と指摘している。「知識は冷厳な客観性よりもそのスピードとインパクトで評価されるようになり、感情的な虚偽はしばしば事実よりも速く伝わることになる」から、リアルタイムの情報伝達は必然的に感覚や感情を強烈に刺激するのである。

 こうした変化があるからこそ、トランプ支持者は事実よりも感情に信頼を置くようになり、どんな事実を突きつけても、トランプへの信頼はそう簡単に揺るがないのだ。これは、決して好ましい現象ではない。だが、この現実に目を背けて理想論ばかりを唱えても、問題を解決するのは難しいのではないか。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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