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感染が蔓延してもイラク政府が全面的な対策をとれない理由

[6]人々の政府と病院への不信感、「10月革命」再来の可能性

川上泰徳 中東ジャーナリスト

政府に対する強い不信感

イラクのナジャフでおこなわれた反政府デモ=2020年1月29日 Sajjad Harsh/Shutterstock.com拡大イラクのナジャフでおこなわれた反政府デモ=2020年1月29日 Sajjad Harsh/Shutterstock.com

 イラクの確認陽性者は6月1日は約7000人だったのが、7月1日には5万4000人と急増し、イラク保健省が病院の収容能力はほぼ満杯になったと発表した。これを受けて、国際的な人道支援組織「国際救済委員会(IRC)」は7月初め、「イラクでの感染を鈍化させるためには、支援を強化しなければならない」と緊急声明を出した。これは、カディミ新政権になっても効果的な対応策が打ち出せていないことを示していた。

 カディミ首相のコロナ対策については、米国の中東研究シンクタンク「ワシントン近東政策研究所」が8月のリポートで、「誰もがカディミ首相は全面的な外出禁止策をとるとみていたが、政府は作戦を変えて新たな戦略を選んだ。集会は禁止するが、人々の外出は規制せず、社会的距離をとり、予防策を講じることを求める方策をとった」と指摘している。急激な感染拡大を止めるために都市封鎖をするという国際的な対応からは外れている。

 コロナの蔓延を前に、政府が穏便な対策しかとれない理由は、

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

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