銀行そのものがいらなくなるという極論さえ可能な時代へ
2020年10月22日
世界の潮流を紹介し、警鐘を鳴らすのが筆者の役割の一つであるとすれば、いま注目してほしいのは、「DeFi」(「ディファイ」と読む)だ。「分散型金融」を意味する“Decentralized Finance”の略語である。最近、米国の「ワシントン・ポスト」やロシアの「ノーヴァヤガゼータ」が報道するのをみて、日本でもそろそろこの言葉について理解し、対応策を考える必要性を痛感している。そこで、このDeFiについて論じてみることにした。
2020年8月2日に更新された「ウォールストリート・ジャーナル」の記事には、「ビットコインの最近の利益の別の原動力は、暗号セクター自体のなかに現れている傾向、すなわち、新しい特別なアプリによって可能となる取引の急増だ。それは「DeFi」という愛称で呼ばれる分散型金融で、これらのアプリやサービスは主として借り入れ、貸し出し、暗号資産取引を容易にする」という記述がみられる。
前述した「ワシントン・ポスト」記事では、「DeFiとは何か」が解説されている。「DeFiはブロックチェーンと呼ばれる、デジタル台帳上で金融機能を果たすダップス(dapps)として知られているアプリケーションを中心に展開している」というのが最初の説明だ。ブロックチェーンについては、拙稿「暗号通貨をめぐる翻訳の混乱:「通貨」を嫌う主権国家 「すべてを疑いなさい」」のなかで紹介したことがあるので、そちらを参考にしてほしい。
問題は、ダップス(ディーアップスとも読む)である。これは、“DApps”と書かれることが多い。“Decentralized Application”のことで、「分散型アプリ」を意味している。記事では、「ダップスは他人との資金の貸し借りをしたり、さまざまな資産をロングまたはショートにしたり、コインを取引したり、預金のような口座で利息を得たりすることを可能にする」としている。
記事によれば、このダップスによる取引は、「スマートコントラクト」と呼ばれるソフトウェアに組み込まれたルールによって管理される。ダップスのアプリは互いに接続でき、いっしょになって複雑な金融サービスをつくり出すこともできるという。つまり、銀行の主たる業務の多くをダップスはできることになり、ダップスに基づくDeFiが普及すれば、銀行そのものがいらなくなるという極論さえ可能な時代を迎えていることになる。
つぎに問題になるのは、「スマートコントラクト」だろう。記事では、「スマートコントラクトとは?」という項目を設けて、つぎのように説明している。
「中央の仲介者と取り決めを行う代わりに、DeFiのアプリは直接取引相手に接続して、独立して動作するように意図されている。スマートコントラクトは一度起動すると、通常、だれも変更したり、微調整したりできない。これらのスマートコントラクトの多くはイーサリアム(Ethereum)と呼ばれるブロックチェーン上で実行される。」
また、耳慣れない言葉が出てきたかもしれない。イーサリアムについては、「イーサリアムは、主にコインの所有権の移転を追跡するビットコイン(Bitcoin)のために発明されたオリジナルの台帳とは異なり、より多くの情報とダップスによって実行される取引の種類を含めるように設計されたものだ」と書いてある。
これは何を意味しているかと
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