支持率低落 菅首相は学術会議の二つの要望を受け入れるべきだ
適当に処理して一件落着とはいかない学術会議問題を打開する唯一の道は
田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授
ベトナム、インドネシアの二カ国を訪れた菅義偉首相の初外遊は時宜を得たもので、かなりの外交成果を挙げている。同伴した夫人もさわやか、謙虚で、好ましい印象を与えた。
米国が初めての訪問国でなかったこともよかった。たまたま米大統領選と重なり、さすがに訪米というわけにはいかなかったかもしれないが、これも首相のツキが味方したのかもしれない。(『菅首相への期待と不安~「ビスマルクのマント」をつかんだ強運と政治勘』参照)

最初の訪問国ベトナムのノイバイ国際空港に到着した菅義偉首相と妻の真理子さん=2020年10月18日午後6時9分、ハノイのノイバイ国際空港
内閣発足1カ月で支持率が低落
内閣発足1カ月にあわせ、それとほぼ同時におこなわれたメディアの世論調査は、残念ながら相当に厳しい結果だった。外遊が終わった後であれば、多少違った結果になったかもしれないが……。
10月17、18両日に実施された朝日新聞の世論調査によると、内閣支持率は53%と、発足直後の9月調査の65%から10ポイント以上下がっている。他のメディアの調査も支持率が低落傾向にある点では同様である。
朝日の調査では、日本学術会議をめぐる問題で、菅首相のこれまでの説明について、「十分ではない」と答えている人が63%に達しているから、これが支持率低落の主因といっていいだろう。
この問題は、適当に処理をして一件落着というわけにはいけないから、これまでの首相の対応のままでは、支持率の下落に歯止めをかけることはできない。今回任命しなかった人を任命し、この問題に真正面から堂々と取り組むことが、事態を打開する唯一の道だと思う。