メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

陸上空母離発着訓練の馬毛島移転計画があらわにした基地問題の本質

FCLP? 南西防衛? オスプレイ移転? 大義は見えず、民主主義も無視

山本章子 琉球大学准教授

分断が進んだ種子島住民

 2011年になると、種子島のFCLP反対の様相は変わり始める。在日米軍再編見直しで、馬毛島は自衛隊基地としたうえで、FCLPでも使用すると発表されたからだ。

 国防政策上、中国船の尖閣周辺領海への侵入を受け、民主党政権下の2010年の防衛大綱で「防衛空白地域」である南西諸島への必要最小限の部隊配備がうたわれたことが反映されたかたちだが、同時に地元懐柔策としても大きな意味を持っていた。とりわけ、中種子町への大きな揺さぶりとなった。

 種子島の人口の半分を抱える西之表市と、種子島宇宙センターで全国的に有名な南種子町にはさまれ、サーフィン客以外には素通りされる中種子町は、2007年から自衛隊誘致活動を展開していた。中種子町議会は2012年末、種子島と屋久島の首長・議会が設立したFCLP馬毛島移転反対団体から離脱している。

 訓練の影響が最も大きい西之表市の中でも、賛否が分かれていく。もともと種子島には自衛隊に就職する者が多く、西之表市民にも反自衛隊感情はない。人口減に歯止めがかからないなか、西之表市に属する馬毛島への自衛隊常駐が地域振興につながるという期待もある。

拡大自衛隊の訓練が行われた中種子町の長浜海岸=2020年9月24日、鹿児島県中種子町

自衛隊駐屯で過疎問題は解決しない

 くり返しになるが、南西防衛は、政府や東京の安全保障専門家から見れば国防政策だ。何を当たり前なことをと思うだろうが、自衛隊の駐屯を歓迎する辺境の島嶼(とうしょ)の住民にとっては、南西防衛は過疎問題の解決手段なのである。

 たとえば、基地の「迷惑料」である防衛施設周辺対策事業。地元の消防施設や公園、児童館や公民館、道路、運動場や体育館、水道、ごみ処理施設などの整備を助成する。さらに、基地建設や施設整備のための公共事業の受注、自衛隊員とその家族の住民税と消費活動など、さまざまな経済効果も期待される。

 防衛省側も、与那国島、宮古島、石垣島などの住民説明会で、自衛隊駐屯の経済効果をあおってきた。馬毛島に関しても、種子島1市2町と屋久島の4人の首長に対して2011年7月、防衛省は「10年間で250億円」という米軍再編交付金の試算を示している。

 だが実際には、自衛隊は「金のなる木」ではない。

・・・ログインして読む
(残り:約2611文字/本文:約4748文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

山本章子

山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授

1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。

山本章子の記事

もっと見る