メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

米中対立の中の日本の立ち位置

花田吉隆 元防衛大学校教授

G20サミットで行われたデジタル経済に関する首脳特別イベントであいさつする安倍晋三首相(中央)。左はトランプ米大統領、右は中国の習近平国家主席=2019年6月28日、大阪市住之江区、代表撮影

 米中対立がいよいよ激しさを増してきた。新冷戦の第一章が始まった。

 米国は、ファーウェイの完全締め出しを決意したようだ。9月15日、米国は、米国技術を使った半導体をファーウェイに供給することを事実上禁止する旨決定した。これで、ファーウェイは5G通信基地局生産が難しくなった。日経の報道によれば、ファーウェイの5G基地局部品のうち、中国製が使われているのはわずか1割弱でしかないという。部品の多くは台湾のTSMCへの委託生産だが、そこでは米国技術が使われているし、その他部品も多くが米国製だ。部品でファーウェイが使えるのがわずか一割弱というのでは、5G基地局製造は事実上不可能になったに等しい。

 米国は、他国によるファーウェイ締め出しも強く迫る。英国は当初、5G基地局の核心部分を除き、35%に当たる周辺部分のみファーウェイ排除に応じるとしたが、米国の強い圧力の下、7月14日、その全てにおけるファーウェイ排除を余儀なくされた。フランスも事実上これにならう。

主戦場はデジタル分野

 米中対立が新冷戦といわれるとしても、それはかつての米ソ冷戦と重要な点で異なる。

 第一に、米ソの冷戦は、核による軍事対立だった。米中間に核の抑止力が働いていることは同じだが、双方が核をもって軍事的に睨み合っているわけではない。主戦場はデジタル分野だ。双方が狙っているのはデジタル覇権であり、それはデジタル分野を制する者こそが次代を制すると考えているからだ。5Gを巡る争いはその最前線に位置する。

 第二に、主戦場がデジタル分野だということは、軍事衝突がないことを意味するわけではない。双方の全面的軍事対立はないとしても、偶発的接触による衝突の可能性は日々増している。2018年、双方の駆逐艦が南シナ海で異常接近したが、そういうことは今後もありうるだろう。

 他方、訓練レベルでは、米中は当然ながら全面戦争を想定している。焦点は、南シナ海に配備される中国の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)であり、米国は南シナ海の人工島を破壊しSLBMの無力化を狙う。逆に、中国はその防衛がカギだ。中国のSLBMが保持される限り、米国は第二撃の恐怖にさらされ、逆に中国にとっては抑止力を維持できる。7月4日から行われた米軍南シナ海演習は、空母2隻を動員しての大規模なものだったが、主眼は中国のSLBM無力化だった。これに対し、中国は、8月に行った南シナ海軍事演習で、中距離弾道ミサイルのグアムキラーDF26や空母キラーDF21Dを発射し対抗した。

 第三に、デカップリングがいわれ、デジタルの世界が二分するように見られるが、実際は、米中の経済は互いに密接に絡み合っており、かつて米ソが互いに独立した経済圏を創り上げた時とは状況が違う。TikTokにしても、米国としては、

・・・ログインして読む
(残り:約2215文字/本文:約3425文字)