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内戦10年目のシリア、感染蔓延でアサド政権も反体制地域も新たな危機

[7]政府による感染実態の過小評価、最悪の医療状況

川上泰徳 中東ジャーナリスト

コロナの死者数は公式発表の80倍か




シリア北西部イドリブ県で消毒作業にあたるシリア民間防衛隊のメンバー=シリア民間防衛隊提供 2020年3月27日


拡大シリア北西部イドリブ県で消毒作業にあたるシリア民間防衛隊のメンバー=2020年3月27日、シリア民間防衛隊提供

 シリアでの実際のコロナ感染の状況を推測しようとする動きはいくつかある。英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンのMRC感染症分析センターが9月15日に発表した「ダマスカスでのコロナ蔓延」とされる報告書はその一つ。人口239万のダマスカスのコロナによる死者を、政府のコロナ感染数の公式発表の推移、超過死亡の推移、病院のベッド数など様々な要因を総合して算出している。

 報告書ではコロナ感染による死者は、政府の公式発表の80倍という推計を出し、9月2日までの死者は、ダマスカスだけで最低でも3250人、最大で5540人として、中央値4340人という数字を算出している。また、ダマスカスの感染者数は約6万7000人と推計している。

 シリアの人口の7分の1強を占めるダマスカスだけで死者が4000人を超えるという推計を単純計算すれば、全国で3万人前後の死者となり、中東でも最悪のレベルとなる。

 ダマスカス以外の周辺地域は、内戦で反体制勢力に支配されたり、激しい戦闘によって政権軍に奪還されたりした地域も多く、病院など医療施設は破壊されている。現在、シリア全土で660万人が家を追われて避難民となり、狭いアパートに複数の家族が暮らしたり、廃墟のようなビルに住んだりする家族もいる。シリア全体のコロナ感染の死者はダマスカスの推計よりもさらに多い可能性もある。

 ダマスカスの病院の状況について、内戦での戦争犯罪を検証する市民組織「シリア正義と事実検証センター(SJAC)」は8月13日付でダマスカスの医師やコロナ患者の家族にインタビューし、「まるでホラー映画

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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