空気を読むだけで「個人」になれると誤解している日本人
2020年10月30日
「ニッポン不全」を少しでも改善するには、教育が重大であることはたしかだろう。そうであるならば、教育を少しでも改善することで日本も少しは良くなるかもしれない。ただし、教育を論じると、一家言をもったさまざまな人々の意見が交錯し、百家争鳴といった状況になりかねない。ゆえに、ここでは「勉強しない大学生」という論点に絞って考察する。他の各種論点については、逐次必要に応じて別の機会に論じてゆきたい。
まずは、日本の大学生が事実として諸外国と比べて学習時間が少ないことを確認しておきたい。やや安易に他のサイトを参考にすると、2018年に公表された「これが世界の大学生の勉強時間だ!気になる日本の学生は…?」という記事では、図に示したように、少なくとも米国の大学生に比べて、日本の大学生の学習時間は圧倒的に少ない。
つぎに、2018年11月に行われた「第2回全国大学生調査」にある統計数値をみてみよう。77大学154学部の協力を得て、3万2913人の学生から回答を得たものである。
日常生活へのアンケートのなかには、1週間に「授業とは関係のない学習・読書」に費やす時間を尋ねた項目がある。それを示したのが下図だが、「0時間」と回答した者の割合だけで、3割を超す。「1ー2時間」を加えると、6割から7割に達する。
それでは、授業くらいはまじめに出席しているのかというと、下にあげた「授業・実験への出席」をみると、専門領域によってその実態は大きく異なっている。週21時間を超えて授業・実験に出席している学生は、人社教芸系で19.1% 、理工農系で29.6%、保健・家政系で49.0%、その他で25.1 %であった。1週間に11時間未満しか出席しない学生は大学に週2、3回しか行かないのだろうか。
よく言われる大学生の読書離れについては、「マンガを除き、1カ月の間に何冊の本(電子書籍を含む)を読むか」を尋ねると、47.9%の学生が「読まない」と答えたという。まったく絶望的な状況にある(下図参照)。
なぜ大学生は勉強しないのか。経済的な理由が大きいかもしれない。あるいは、大学の授業自体の陳腐化といった問題もあるだろう。他方で、筆者の友人である出口治明立命館アジア太平洋大学学長はその著書『本物の思考力』(小学館新書)のなかで、大学生に勉強させるには、「企業が採用時に大学の成績を重視にするようになれば、大学の教育レベルも自動的に上がります」と書いている。
筆者の持論は、「何時間学習するのか」や「何を学ぶか」が問題なのではなく、「いかに学ぶか」こそもっとも大切だということである。その際、学ぶ対象として、出口が強調するように「人、本、旅」から学ぶことの肝要さを強調しておきたい。
人からいかに学ぶかというと、とにかく人と接して何かを感じ取ってほしい。自分に足りない点、その人のいい面も悪い面もわかるかもしれない。
筆者は大学生のころ、
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