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プラットフォーム独占がもたらすジャーナリズムの衰退

民主主義を死守するために何が必要なのか

塩原俊彦 高知大学准教授

 2020年10月6日、米下院司法員会の反トラスト・商業・行政法小委員会は約16カ月もの調査結果をまとめた449ページにのぼる『デジタル市場における競争に関する調査』を公表した(なお、公表後しばらくしてこのURLではアクセスできない状態がつづいている)。

 これは、アマゾン、アップル、フェイスブック、グーグルという「テック・ジャイアンツ」が反競争的で独占的な戦術によって成長した問題をさまざまな観点から調査したもので、政府規制当局がこれらの企業を牽制できるようにするための連邦法の抜本的修正を提言している。とくに、支配的企業が支配する市場で他の企業と競合することを禁止する「構造的分離」(structural separation)の要求が提言されている点が興味深い。10月20日には、司法省がグーグルを複数の連邦独占禁止法違反で提訴するに至っている。

 他方で、日本の公正取引委員会は2019年9月末締め切りで「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」に対するパブリックコメントを求め、同年12月に結果を公表した。

 前述したテック・ジャイアンツはすべてインターネットを介して、個人と個人、個人と企業、企業と企業といったあらゆる活動の主体を結びつける場を提供している、デジタル・プラットフォーマーだから、日米ともにこうした巨大なデジタル・プラットフォーマーに厳しい目を向けつつあることがわかる。

 ただ、この二つの動きを比較すると、米国にあって日本にない論点があることに気づく。それは、プラットフォーム独占がジャーナリズムの衰退をもたらすという問題だ。残念ながら、この論点に気づいていない日本では、この問題の深刻さが理解されていない。ゆえにここではこの問題について考察してみたい。

拡大Ascannio / Shutterstock.com

「プライバシー権の侵害」にかかわる日本の論点

 公正取引員会はデジタル・プラットフォーマーによる独占禁止法第2条第9項第5号の「優越的地位の濫用」に注目しているにすぎない。この「優越的地位の濫用」は「優越的地位」、「正常な商習慣に照らして不当に」、「濫用行為」の3要素からなっている。この3要素ごとに細かい法的論拠を詰めようとしているらしい。

 たとえば、「濫用行為」については、プラットフォーマーによる個人情報の「取得」ないし「利用」における、つぎのような行動が「濫用」にあたると考えられている。個人情報などの不当な取得には、①利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得すること、②利用目的の達成に必要な範囲を超えて、消費者の意に反して個人情報を取得すること、③個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、個人情報を取得すること――などがある。他方、個人情報などの不当な「利用」には、①利用目的の達成に必要な範囲を超えて、消費者の意に反して個人情報を利用すること、②個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、個人情報を利用すること――がある。

 いずれも、いわゆる「プライバシー権の侵害」にかかわっている。公取委としては、独禁法の執行機関としてあくまで同法の「優越的地位の濫用」の範囲内でプラットフォーマー規制強化に臨みたいようだ。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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