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10数年の里親経験で感じた日本の課題

親と暮らせない子ども約4万5000人。元厚生労働省担当課長が語る

岩崎賢一 朝日新聞バーティカルメディア・エディター

子どもに必要なソーシャルワークは誰がするのか

――里親家庭は、長らく子育てが終わった専業主婦がいるような家庭がイメージされてきたと思います。

 結果として「不調」に終わったわけですが、実子3人を育てた経験やノウハウは役に立ちませんでした。子どもの反応が予測できませんでした。今は色々なことが分かってきて、驚いたり、ひるんだりすることはなくなりましたが、あのときは児童相談所のアセスメントや、アセスメントに基づいてこういう対応をすればいいというインストラクションも、ほとんど何もありませんでした。

 チームとしてこの子どもをみんなで支えていこうという発想は当時はなく、里親家庭に丸投げのような状態でした。今も状況はたいして変わりません。子どもにどのような対応やソーシャルワークが必要なのかは、結局、私たちが考えています。

――里親家庭になる方のなかには、周囲に社会福祉や児童精神に詳しい知人がいる人がいます。ただし、すべての人がそのような人脈を持って里親になるわけではないと思います。

 私たち夫婦も社会的養護の実践においては素人ですが、確かに私の周囲には詳しい人たちがいます。情報を集めながら里親家庭をやっています。しかし、そんなことができる里親家庭は少ないと思います。だからこそ、里親家庭の支援のシステムを作らないといけないというのが今も大きな命題です。

里親拡大Studio Romantic/Shutterstock.com

児童相談所によるフォローは難しい

――先日、児童相談センターの元幹部に話を聞いたら、児童相談所の職員は若く、先輩にケースワークを学ぶ機会も十分でないなか、日々の業務を行っているということでした。人事異動も早く、経験が積み重なっていかないとも話していました。また、里親家庭の方からは、子どもとのマッチングについて、児童相談所の管轄に縛られたり、職員個人に依存しすぎたりしているのではないか、という声がありました。

 我が家も新人里親だったとき、もう少し児童相談所の職員のフォローがあってもよかったのかもしれないと思い出すことがあります。これまで多くの児童福祉司に出会いましたが、この人なら信頼できると思ったのは2人だけですね。目の前の子どもを支えていくのが仕事で、それに向き合えているのか。経験って大きいですよね。子どもの反応はものすごく多様です。医療における患者や高齢者介護のお年寄りに比べても、はるかに複雑で多様な反応なのです。

 ソーシャルワークやケアワークは、マニュアル化が難しく、どうしても経験に頼らざるを得ない部分が大きい。東京都もがんばって職員の増員をしていますが、追いついていないし、スーパーバイザーも不足しています。新しく配属された職員と1年間ぐらい先輩の児童福祉司が一緒に動き、各家庭を引き継いでいかないと、職員は育っていかないと思います。

 子どもに毎年1回、面談に来ますが、ここ数年、職員は毎年変わっています。でも、それは公務員の宿命でもあります。だから、私は対人サービスを公務員がやることは難しいと感じています。

 医療や介護、障害の世界では、ケアマネジメントをずっと前から民間が行っています。一方、児童養護の世界では、児童相談所の存在が大きく、権限も持っています。しかし、公務員組織のため異動が多く、土日や夜間の対応も遅くなりがちです。

 里親家庭でトラブルがあるのは、土日や夜です。我が家も2回、SOSを出したことがありましたが、十分な対応をしてもらえませんでした。緊急通報の窓口は、委託業者です。こちらがつないで欲しいところにはつないでもらえません。勤務時間中しか担当者にはつながりません。

里親拡大Chikala/Shutterstock.com

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筆者

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき けんいち) 朝日新聞バーティカルメディア・エディター

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで医療や暮らしを中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当、オピニオン編集部「論座」編集を担当を経て、2020年4月からメディアデザインセンターのバーティカルメディア・エディター。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)。 withnewsにも執筆中。

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