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大爆発後のレバノンは新たな感染拡大と政治危機に

[8]難民・外国人労働者の悲惨な状況、反政府デモで辞任した首相が再登板

川上泰徳 中東ジャーナリスト

深刻な貧富の格差

 レバノンの現状を理解するためには、2019年10月に始まった市民のデモの背景を押さえておく必要がある。

 デモは、経済低迷による外貨不足で公的債務残高が国内総生産(GDP)の約170%という財政危機の中で起きた。政府はガソリンやたばこに対する増税とともに、さらに「ワッツアップ」と呼ばれるスマートフォンの通信アプリの利用に課税することを明らかにした。若者たちはこれに反発して、通りに繰り出した。

レバノンのベイルートでおこなわれた反政府デモ=2019年10月  P.jowdy/Shutterstock.com拡大レバノンのベイルートでおこなわれた反政府デモ=2019年10月 P.jowdy/Shutterstock.com

 デモは政治の失敗や腐敗を批判する抗議運動として宗教・宗派を超えて広がり、ハリリ首相は10月末に辞任した。現地紙「アンナハール」によると、若者たちの反発の背景には貧困の広がりがある。人口の30%近い150万人が1日4ドル(約430円)で生活する貧困層で、うち30万人は1日2ドル半で生活する極貧層だという。

 一方で貧富の格差も深刻だ。

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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