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維新の会の「大阪都構想」が住民投票で再度否決された三つの理由

「都構想のエッセンス」は間違っていないのに、5年前と同じ結果に終わったのは……

米山隆一 前新潟県知事。弁護士・医学博士

成長には直結しない「都構想」

 しかしその一方で、府(県)と政令指定都市の権限の再整理それ自体は、単に行政機構内の権限の分掌を変えるだけで、成長に直結するものではありません。府(県)が成長を遂げられるかどうかは、当然のことながら、外形である大阪都構想にではなく、中身である「成長戦略」や「都市計画」によって決まります。維新が、その肝心の「中身」を提示することなく、「外形」に過ぎない大阪都構想が成長に直結するかのように喧伝したことは、極めて大きな誤り、もしくはミスリードであったと私は思います。

 さらに、成長戦略、都市計画のような将来の話ではなく、「日々の住民サービス」の観点から見たら、豊かで人口が集中する大都市の税収をそのまま大都市に使った方が使える金額は高くなります。また、これまで一つの大阪市でやっていた「日々の住民サービス」を四つの特別区に分割すれば、当然ながら行政コストは上がります。住民投票選挙の最終盤で報道され話題を呼んだ「大阪都構想が実現した場合、行政コストが218億円増加する」という毎日新聞の報道は、その前提や細かい数字に修正の余地はあるにせよ、基本的には誤報でも捏造(ねつぞう)でもなんでもなく、むしろ当然の「事実」であると思われます。

住民投票は「5年前と同じ」結果に

 つまり、大阪都構想は「よりよい成長戦略・都市計画の立案・実行」のための行政機構の整備というエッセンスにおいては正しいけれど、それ自体が成長に直結するものではなく、場合によっては「日々の行政コスト」を上げて域内における行政サービスを低下させかねないものであり、本来、そのメリットとデメリット、実行した場合の影響や効率的な執行方法を様々に検討し、より良い制度設計を、時間をかけて模索すべき、極めて複雑で大きな問題なのです。

 ところが、このきわめて複雑で大きな問題である大阪都構想の住民投票が、再度否決されたその理由は、出口調査の結果から見るかぎり、極めてシンプルです。

 NHKの世論調査によれば、「前回、『賛成』に投票したと人38%、『反対』に投票した人37%、『投票していない』人が24%の中で、前回の住民投票で「賛成」したと答えた人のうち、およそ90%が今回も「賛成」、前回「反対」した人のうち、およそ90%が、今回も「反対」に投票した」とされており、有権者の賛否は前回とほとんど変わっていません。

 「行政区ごと」の賛否でも、賛成・反対が変わったのは、前回賛成多数だったのが反対多数になった東成区のみで、後はすべて同じです(NHK NEWS WEB参照)。要するに今回の住民投票は、一言で言って「5年前と同じ」結果だったのです。

拡大大阪都構想への反対多数が確実となり、記者会見に臨む(左から)大阪維新の会の吉村洋文代表代行、松井一郎代表、公明党の佐藤茂樹府本部代表ら=2020年11月1日午後11時0分、大阪市北区、水野義則撮影

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 前新潟県知事。弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

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