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米大統領選が示した国内分断の深化と対中国軍事対抗路線の日本への影響

バイデン氏の勝利が確実に。日本にとってより重要なのはアメリカの対中軍事政策だ

山本章子 琉球大学准教授

 2020年11月3日、一般投票の投開票が始まった米大統領選。日本では、報道する人間の中にもあまりよく理解していない者がいるように見受けられるが、この一般投票では、18歳以上の有権者が州ごとに自分たちの代表となる選挙人を選ぶ。そして、12月14日に、各州の選挙人が大統領候補に投票する。大統領は、一般投票の得票数ではなく選挙人の数で決まるのであり、過半数の選挙人を制した候補者が次の大統領となる。

 ただし、選挙人がどの大統領候補に投票するかは、あらかじめ分かっているので、一般投票で事実上の勝敗が決まるというわけなのだ。ちなみに、前回2016年の米大統領選では、7人の選挙人が予定と違う候補に投票したが、結果には影響しなかった。

 米大統領は行政府の長であり、超大国の外交責任者である国家元首であり、世界最大の軍隊の最高司令官である。だが、今回の選挙で大統領になる者が問われているのは政策ではない。アメリカ社会の深刻な分断にどう対処するかだ。

 他方、深刻な国内の分断にもかかわらず、ほぼ唯一、合意が形成されている政策がある。それは中国に対する軍事的な対抗だ。

 本稿では、何がアメリカに分断をもたらしているのか。そのなかで超党派の合意形成がなされている対中軍事政策が、日米関係にどのような影響をもたらすのかについて見ていきたい。

拡大大統領選の開票作業が続く米ペンシルベニア州フィラデルフィアで、警官隊を挟んでトランプ大統領の支持者とにらみ合い、気勢を上げるバイデン氏の支持者ら(右)=2020年11月6日、渡辺丘撮影

「トランプvs反トランプ」=「保守vsリベラル」

 今回の大統領選の最大の争点は、「ドナルド・トランプかそうでないか」。4年前に「バラク・オバマ路線かそうでないか」が争われた、米大統領選と同じだ。これは、保守とリベラルの分断が深まっていることを示している。

 ニューヨーク・タイムズ紙の2020年米大統領選の出口調査によれば、自身を「保守」だと答えた投票者(全投票者の37%)の84%が現職のトランプ大統領に、「リベラル」だと答えた者(全体の24%)の89%が民主党候補で元副大統領のジョー・バイデン氏に入れた。一方、「中道」だと答えた者(同40%)では33%がトランプ大統領に、64%がバイデン氏に投票している。

 また、「共和党支持者」だと答えた投票者(全体の35%)の93%がトランプ大統領に、「民主党支持者」だと答えた者(同37%)の94%がバイデン氏に入れた。

 報道では、共和党支持者だがトランプ大統領に投票しない意思を表明した、リチャード・アーミテージ元国務副長官など歴代の共和党政権の元高官たち、ミット・ロムニー上院議員、故ジョン・マケイン上院議員の家族が注目を集めた。とはいえ、ニューヨーク・タイムズ紙調査によれば、「保守」の14%、「共和党支持者」の6%しかバイデン氏に投票していない。つまりバイデン氏は、超党派の支持を集めたとはいえないのだ。

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筆者

山本章子

山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授

1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。

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