[10]SNSも規制、政府発表の死者数に疑問を呈した医師が逮捕
2020年11月14日
トルコは2002年以来、イスラム色の強い公正発展党(AKP)を率いるエルドアン大統領(2003年~2014年は首相)が権力を握るワンマン体制となっている。AKP主導で経済発展と社会基盤整備、貧困解消を進めてきたが、一方で強権化という批判も強まった。2018年以降、トルコ・リラの下落で経済困難を抱え込み、19年の統一地方選挙では世俗派野党の攻勢を受けた。そこにコロナ禍が到来した。
トルコは11月12日時点で確認陽性者は40万2053人、死者は1万1145人となり、中東ではイラン、イラクに次ぐ感染拡大国である。ただし、人口8430万のトルコの100万人当たりの死者は132人で、イランの456人、イスラエルの304人、イラクの282人、サウジアラビアの159人よりも少ない。感染は広がっているが、死者は比較的抑えられていることが分かる。
政府系のサイトでは「トルコは過去15年間、医療体制を大幅に充実させ、コロナ感染との闘いで最も成功した国の一つである」と自賛した後で、「この間、各地方に基幹病院を整備し、2020年だけで11の新たな病院をつくり、最新技術を備えた1万4000ベッドを増やした」と書いている。そのうえで、「3月11日に最初の感染者が確認されて以来、感染者が4日間に接触した人間をすべて割り出してPCR検査を行い、陽性者を隔離した」とする。
政府は陽性者が急増した4月11日、12日に土日の外出禁止令を発出し、5月半ばまで継続した。さらに、65歳以上の高齢者と20歳以下の若年層の自宅待機や外出規制をしたのも、トルコ独特の対応だった。
しかし新規陽性者は4月中旬から下旬にかけて、1日3000人台から4000人台が確認され、毎日100人以上の死者が出るような修羅場を経験した。その直後、5月7日付のドイツの国際放送「ドイチェ・ヴェレ」(DW)は、「トルコでは急速な感染拡大にもかかわらず、恐れられていたような医療崩壊は起きなかった。政府によると、多くの病院で患者への対応が許容範囲を超えることはなく、集中治療室(ICU)が使用されたのは60%にとどまった」と書いている。
3月に発表された150億ドル(約1兆6000億円)規模の経済刺激パッケージは、国民総生産(GDP)の1.5%と、欧州諸国と比べればかなり少ない額と評価されている。
トルコの財政収支について、国際通貨研究所のニュースレター「新型ウイルス感染拡大下のトルコ経済とリスクの見通し」(九門康之)によると、「2019年には対GDP比3.5%の大幅な赤字となった。2020年予算は、財政赤字を対GDP 比で2.9%に抑える計画となっていた。2020年3月の税収は、直接税が前年同月比で18%、間接税が同6%それぞれ減少した。これは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う国内支援策として、法人税や付加価値税(VAT)等諸税の納税の猶予を開始した影響である」としている。赤字はさらに継続することになる。
エルドアン大統領の対コロナ戦略は、経済的支援には財政難により限界があるため、国民の怒りや反発を受ける全面的なロックダウン(都市封鎖)は行わず、部分的なロックダウンで経済活動をある程度動かしながら感染を抑え込んでいこうとするものである。
感染第1波のピークが過ぎ、行動規制の緩和が始まる時点の5月12日に日刊紙ソジュズ紙に掲載された世論調査では、「政府のコロナ対策は成功していると思うか」という質問に対して、43%が「成功」と回答し、17%が「やや成功」、「成功していない」は35%だった。6割の国民が肯定的な評価をしている。
私がイスタンブールに住んでいるジャーナリストの知人に連絡をとったところ、仕事はすべて自宅からのリモートになっているとしながらも、
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