トルコは感染を比較的抑えつつも、強権的な言論統制が続く
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川上泰徳 中東ジャーナリスト
6割の国民が肯定的な評価

イスタンブールのカフェで=2020年8月 Nelson Antoine/Shutterstock.com
3月に発表された150億ドル(約1兆6000億円)規模の経済刺激パッケージは、国民総生産(GDP)の1.5%と、欧州諸国と比べればかなり少ない額と評価されている。
トルコの財政収支について、国際通貨研究所のニュースレター「新型ウイルス感染拡大下のトルコ経済とリスクの見通し」(九門康之)によると、「2019年には対GDP比3.5%の大幅な赤字となった。2020年予算は、財政赤字を対GDP 比で2.9%に抑える計画となっていた。2020年3月の税収は、直接税が前年同月比で18%、間接税が同6%それぞれ減少した。これは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う国内支援策として、法人税や付加価値税(VAT)等諸税の納税の猶予を開始した影響である」としている。赤字はさらに継続することになる。
エルドアン大統領の対コロナ戦略は、経済的支援には財政難により限界があるため、国民の怒りや反発を受ける全面的なロックダウン(都市封鎖)は行わず、部分的なロックダウンで経済活動をある程度動かしながら感染を抑え込んでいこうとするものである。
感染第1波のピークが過ぎ、行動規制の緩和が始まる時点の5月12日に日刊紙ソジュズ紙に掲載された世論調査では、「政府のコロナ対策は成功していると思うか」という質問に対して、43%が「成功」と回答し、17%が「やや成功」、「成功していない」は35%だった。6割の国民が肯定的な評価をしている。
私がイスタンブールに住んでいるジャーナリストの知人に連絡をとったところ、仕事はすべて自宅からのリモートになっているとしながらも、
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