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アフター・トランプ、恐れるべきは保守中道の崩壊

民主主義の安定に不可欠な勢力は生き返るのか

三浦俊章 朝日新聞編集委員

トランプ氏が拒んだ「敗北宣言」の伝統

 2016年のアメリカ大統領選で、初の女性大統領を目指した民主党のヒラリー・クリントン候補は、急追したトランプ候補にまさかの敗北を喫した。クリントン氏は開票日のうちに、トランプ氏に電話して敗北を認め、翌日のスピーチでは、「彼がすべてのアメリカ国民のための大統領として成功することを願っている」「この国は私たちが思っている以上に深く分断されている。それでも私はアメリカを信じているし、今後も信じ続けたい。結果を受け入れて未来に目を向けよう。広い心でトランプ氏に国をリードする機会を与えなければならない」と語った。

 その8年前の2008年11月。民主党のオバマ候補に敗れた共和党のマケイン候補は、支持者を前に、オバマ氏に祝意を伝える電話をしたことを伝えた。そのとき会場から上がった大きなブーイングを制して、マケイン氏はこう続けたのだ。「長く困難な選挙戦を制したオバマ氏の能力と忍耐力に敬意を感じざるをえません」「今回の選挙は歴史的な選挙であります。アフリカ系アメリカ人にとって特別な意味を持つはずです。今夜、彼らの尊厳が現実のものとなったのです」

 当選確実が決まると、敗れた候補者が勝った候補者を祝する。この敗北宣言は、19世紀末にまでさかのぼるアメリカ大統領選の伝統である。それは単なる儀礼にとどまらない。選挙の結果を受け入れ、平和的な権力交代を保証する、これはアメリカ民主主義の柱である。

 その手続きをトランプ大統領は無視しているのだ。

 大統領は、激戦州の開票作業で不正があったとして、「左派が選挙を不正操作した」とツイート攻撃を繰り返している。裁判所に訴える法廷戦術にも打って出た。訴訟に必要な寄付を支持者に呼びかけている。

 だが、選挙における不正を示すような証拠は、これまでのところ、どこからも出ていない。各州の選挙委員会は不正の存在を否定。国土安全保障省の幹部も、大統領のいう選挙システムの不正というものはなかった、と断言している。日々、大統領の「陰謀論」は外堀を埋められつつある。

 だが、そういう中でも、与党共和党幹部の歯切れの悪さが目立っている。なぜ彼らはトランプ氏を擁護し続けるのか。

ホワイトハウス周辺でバイデン氏の勝利を祝う人たち(11月7日、ランハム裕子撮影)拡大ホワイトハウス周辺でバイデン氏の勝利を祝う人たち=2020年11月7日、ランハム裕子撮影

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筆者

三浦俊章

三浦俊章(みうら・としあき) 朝日新聞編集委員

朝日新聞ワシントン特派員、テレビ朝日系列「報道ステーション」コメンテーター、日曜版GLOBE編集長などを経て、2014年から現職。

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