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バイデン新政権と菅政権。多様性重視とアジア離れに日本はどう向き合うか

日米関係の真に深めるためには菅首相が理念や哲学を磨き上げ率直に語り合う必要がある

星浩 政治ジャーナリスト

多様性・持続可能性重視に舵を切る

 まず指摘できるのは、バイデン政権が多様性と持続可能性を重視する方向に大きく舵を切っていることである。

 2016年の大統領選では、民主党のヒラリー・クリントン氏がトランプ氏に惜敗。初の女性大統領をめざしたこと自体が多様性を意味していたし、ジェンダーや人種間の格差解消といったクリントン氏の主張も多様性に重きを置くものだった。

 これに対して、トランプ氏の支持基盤は白人男性が主体だった。彼らの多様性への反感が、トランプ氏を大統領に押し上げた一因と言えるだろう。当選後の4年間、トランプ大統領は融和や統合より分断や対立を増幅させた。白人警察官による黒人への暴行や銃撃が相次ぎ、ブラック・ライブズ・マター(黒人の命が大切だ)運動が広がった。そうした動きが、融和と団結を掲げたバイデン氏の当選をもたらしたのである。

 米国では南部諸州を中心にヒスパニック系、アジア系、黒人の人口比が上昇。その支持を受けて民主党が勢いを増している。大統領選で、これまで共和党の牙城だった南部のジョージア州やアリゾナ州でバイデン氏が勝利したのは、そうした人種構成の変化が大きく影響している(大接戦となったジョージア州では再集計の予定)。

 こうした背景から、バイデン政権は当然、多様性を前面に掲げる。くわえて、バイデン氏は温室効果ガスを削減する国際枠組みであるパリ協定に復帰すると表明するなど、「持続可能性」を重視している。多様性と持続可能性は、民主党系のシンクタンクなどが唱えてきた理念であり、バイデン政権で具体的な政策づくりが進むことになる。

人権の重視も大きな柱

 人権の重視もバイデン政権の大きな柱だ。国内では有色人種やLGBTなどマイノリティーの人権保護、国際社会では独裁政権下の人権抑圧への批判が前面に掲げられるだろう。その点では、国際社会で人権抑圧が批判されている北朝鮮の金正恩労働党委員長への対応は様変わりするはずだ。

 トランプ大統領は金委員長との会談で核・ミサイル問題の解決をめざしたが、大きな進展はなかった。バイデン氏は「独裁者とは交渉しない」方針を掲げており、北朝鮮が核開発の放棄を明確にしない限り、交渉は進まないだろう。拉致問題を抱える日本が、金正恩委員長と「無条件で会談したい」(菅首相)としている立場とは隔たりが生じており、日米の対北朝鮮外交は再調整が迫られている。

拡大バイデン氏の勝利宣言を演説会場の外で見守り、歓声をあげる支持者ら=2020年11月7日夜、米デラウェア州ウィルミントン、渡辺丘撮影

大きく変わる外交と各国の危惧

 対北朝鮮政策だけでなく、米国外交は大きく変わるだろう。バイデン氏は、トランプ大統領が「米国第一主義」で同盟国を軽視したことを批判、同盟重視を掲げている。中国への対応では当面、日本やオーストラリアなどの同盟国と連携して向き合うことになると見られる。

 ただ、バイデン政権は国内でインフラの整備、医療制度の拡充、教育の公費負担増などを予定しており、財政支出の増加は避けられない。一方で、財政赤字の削減は急務だ。そのため、国防費の削減を打ち出す公算が大きい。その場合、同盟国に負担増を求めてくるだろう。日本も例外ではないが、防衛費の負担増には限界があり、米国との摩擦が強まることが予想される。

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筆者

星浩

星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト

1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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