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東南アジアにも欧州テロの波紋 コロナ禍に乗じてうごめくイスラム過激派 

世界で高まるイスラム教徒への憎悪「イスラモフォビア」。危機は欧米だけではない

海野麻実 記者、映像ディレクター

マレーシアではフランス製品ボイコットを呼びかけ

 問題は、こうしたテロの連鎖の影響が欧州にとどまらないことだ。日本にも近い東南アジアでも、微かな震動を引き起こしている。マクロン大統領のムハンマド風刺画を擁護した発言などを発端として、イスラム教を国教とする国家などでは、「表現の自由は許されても、冒涜は許されない」などと一斉に反発が起き、フランス製品のボイコット運動なども起きているのだ。

 トルコやパキスタンなど中東諸国だけではなく、国民の約6割以上をイスラム教徒が占める東南アジアのマレーシアも例外ではない。

 マレーシア国内のイスラム教団体は11月1日、クアラルンプール市内で会見を開き、ディオールやロレアル、ランコム、シャネル、ルノーなど、フランス企業の名前とロゴがずらりと並んだプラカードを掲げて、フランス製品のボイコットを訴えた。

 「我々は、トルコのエルドアン大統領がイスラム教のリーダーたちにフランス製品のボイコットを呼びかけたことを歓迎する」としたうえで、「ボイコットはマクロン首相が彼の宣言を撤回するか、フランス市民が彼を引きずり下ろす重圧を与えるまで続く」と強調した。

拡大マレーシアの首都クアラルンプールでフランス製品のボイコット運動を呼びかけるイスラム教団体 (マレーシアの大手ニュースサイト・Malay Mailより

 穏健なイスラム教国であるマレーシアでは、いまのところ、その宣言の影響力は高くないようだ。市民らによる目立ったデモ活動などは発生しておらず、大手百貨店内にあるフランス製品を扱うコスメ店や服飾店には普段通りに買い物客が訪れ、買い物を楽しんでいた。

 フランス製のベビー服を扱うブティックショップでレジ番をしていた、ヒジャブを被ったイスラム教徒の若い女性に、ボイコットの影響があるかと聞くと、「フランス製品のボイコットが呼びかけられていることすら知らなかったわ。お客さんは普段に比べて圧倒的に少ないけれど、これはボイコットではなくコロナの影響ね」と淡々と口にした。

拡大フランス製のベビー服などを販売するショップで店番をしていたイスラム教徒の女性店員は、フランス製品ボイコットの影響は特に受けていないと話した=マレーシア・クアラルンプール、 海野麻実撮影

「風刺画騒動は容認できない」という声も

 だが、都市部を中心とした比較的リベラルなイスラム教徒らの反応と、敬虔なイスラム教徒の間では、その感情に大きな温度差がある。

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筆者

海野麻実

海野麻実(うみの・まみ) 記者、映像ディレクター

東京都出身。2003年慶應義塾大学卒、国際ジャーナリズム専攻。”ニュースの国際流通の規定要因分析”等を手掛ける。卒業後、民放テレビ局入社。報道局社会部記者を経たのち、報道情報番組などでディレクターを務める。福島第一原発作業員を長期取材した、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『1F作業員~福島第一原発を追った900日』を制作。退社後は、東洋経済オンラインやForbes、共同通信47Newsなどの他、NHK Worldなど複数の媒体で、執筆、動画制作を行う。取材テーマは主に国際情勢を中心に、難民・移民政策、テロ対策、民族・宗教問題など。現在は東南アジアを拠点に海外でルポ取材を続け、撮影、編集まで手掛ける。取材や旅行で訪れた国はヨーロッパ、中東、アフリカ、南米など約40カ国。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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