2020年11月19日
「コロナで二度目の緊急事態宣言中。スペインのニューノーマルを見る(前編)」に引き続き、スペイン人の暮らしが新型コロナウイルスでどんな風に変わったかを紹介しよう。
人との付き合いはどう変化しただろうか。外出禁止が解かれた後、スペインの人たちが真っ先にしたのは、友人や家族とバーやレストランで集うことだった。スペインには、レストランやバーなどで友人、家族と食事をする習慣が根付いている。それは重要な社交場、楽しみ、癒しの場でもある。
新型コロナウイルスの感染が深刻化する前、平日の夜や休日になると、バーのカウンターは様々な年代の人びとであふれ、注文するのも一苦労という混雑ぶりを呈していた。それこそが、まさしくスペインを象徴する光景のひとつだった。それだけにコロナ禍で友人たちと会えない喪失感は、日本人の比ではなかったと容易に想像できる。
今回のパンデミックにより、観光客に頼っていたレストランの多くが休業や廃業に追い込まれた。だが、地元民に人気のあるレストランはしっかり生き残っており、飲食店の営業が再開された現在は、満席状態で賑わっている店も多く見かける。
店内のメニューにQRコードを読み込む方式が採用されていたり、屋外のテラス席にお客さんを誘導したりといった工夫はしているが、日本の飲食店のように、入店時に検温などをしている店はほとんどない。日本では、感染予防のために多人数での会食を避けるなどする人も少なくないが、スペインでは会食を控えることの優先順位は、日本人よりもはるかに低いようだ。
テレワークになって、外食や食事のあり方はどう変化しただろうか。エドゥアルドさん夫婦は、これまでは月に2〜3回外食をしていたそうだが、今はゼロ。もともと二人とも料理が得意なので、ロックダウンの間は調理することを一つの楽しみにしていたのだそうだ。
外食には、テラス席など換気の良い場所であっても、食事中は周囲の人がマスクをせず会話をしているため、今はまだリスクを感じるという。
スペインでは大手などで「昼食手当」を出している会社も多く、月曜から木曜まで(金曜は終業時間が短いため)一食につき8〜9ユーロ(1000〜1100円)分を会社負担で食べることができる。テレワークとなり、昼食費が支給されなくなった会社も多いが、エヴァさんの会社は自宅で働いた場合も引き続き支給されているという。
3月末の厳しいロックダウンの際の外出制限では、とにかく家の中で過ごさなければならず、色々な工夫をして時間を過ごしていたという。仕事が終わった後や休みの日は特に時間が過ぎるのが遅く感じたそうで、長い時間、頭を使う数字ゲームなどをして暇をつぶしたと話す。
スペインでは一時期、スーパーマーケットからベーキングパウダーが消えた時期があったが、エドゥアルドさん夫婦を含め、多くの人が自宅でパンやお菓子作りをはじめたのだ。エヴァさんはこれまで通っていたジムに行けなくなったことから、エクササイズビデオを購入し、家の中で体を動かしていた。エドゥアルドさんは、家の倉庫に放置してあった多くの電化製品を分解し、修理することに没頭したという。そのお陰で、捨てようと思っていたものまで再利用できるようになったという。ロックダウン直後にはこのタイミングではじめようとヨガマットを購入したが、結局一度も使わなかったとそうだ。
これまではしなかった新しいことに挑戦した人も少なくないようだ。
もう少しでクリスマスシーズン。スペイン人にとっては、一年で一番大切な家族で過ごすイベントであり、国民のほぼすべての人が実家へ戻る。今年はコロナの影響で、移動制限などがある州もあり、人によっては家族でクリスマスを迎えられない可能性も出てきている。気の早い人には、州ごとのロックダウンがはじまる前の今の段階で、すでに帰省をはじめている人も例もある。
「一番寂しいのは両親や祖父母と抱擁やキスができないこと。コロナが流行してから、肘を付き合わせる挨拶が一般的になったが、親族に接触できないのは最も辛いこと」とエドゥアルドさん。
接触文化のあるスペインでは、コロナ禍で友人や家族とハグやキスができないことは、非常にストレスフルな状況であるようだ。ただ、だからこそそれを補うかのように、
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