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外国人労働者に依存するクウェート社会のコロナ蔓延

[11]劣悪な住環境で感染が拡大、外国人労働者の削減も

川上泰徳 中東ジャーナリスト

豊かな市民が海外から持ち込んだウイルスに外国人が感染


ロックダウン(都市封鎖)で人気のないクウェート市の商店街 Stewart Innes/Shutterstock.com拡大外出制限により人気のないクウェート市の商店街=2020年4月20日 Stewart Innes/Shutterstock.com

 クウェートでは現在にいたるまで、感染者の7割から8割は外国人労働者で、国民の間には彼らが感染源になっているという見方が広がっている。

 ただし、在米アラブ人のサイトに6月に掲載された「なぜ、クウェートは湾岸諸国の中で最悪のコロナ感染国となったか」という分析記事によると、第一の原因は、クウェートが2月下旬から3月にかけて在外クウェート人の帰国便約60機を受け入れたこと。第二の原因は、不衛生な住環境に暮らす外国人労働者の存在、としている。

 豊かなクウェート市民が、ビジネス、観光、留学など様々な理由で海外に出て、外国からウイルスを持ち込み、国内で家政婦や大型量販店の店員、ビルなどの清掃人、運転手などあらゆる場所で働く外国人が感染し、蔓延させたという構図になる。

 封鎖措置がとられた地域の一つ、ジャリーブ・シュユーフ地区については、現地紙「アルカブド」が2019年5月に「混沌と犯罪の温床」と題する現地報告を出していた。地区の人口は32万8000、クウェート人は4000人だけで、残りはバングラデシュ人、インド人、エジプト人、シリア人だという。

 記事では「通りは人で混雑して、進むこともできない。道路の真ん中には下水がたまった場所もある。驚いたことに、店の名前には(パキスタンなどで使われている)ウルドゥー語文字が使われ、ここがアラブの国だと思わせるようなものはない」と描写している。人々は一つの部屋に6人から10人が住み、一つのベッドを3人で共有して、24時間を交代で寝ているケースもあるという。

 今年9月には英国のロンドン大学LSEのサイトに「クウェートの貧困な都市政策がコロナウイルスの蔓延を助長」という分析記事が掲載され、外国人労働者が暮らす地域の整備の遅れが感染拡大の原因になっていると指摘した。

 分析によると、

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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