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習近平国家主席の続投への布石 中央政法委員会における反腐敗闘争

柴田哲雄 愛知学院大学准教授

送り込まれた習近平氏の側近、陳一新氏

 「教育整頓」工作の責任者に当たる「全国政法隊伍教育整頓試点弁公室(弁公室は事務所の意)」主任に任命されたのは、中央政法委員会秘書長の陳一新氏です。陳一新氏は1959年に浙江省泰順県で生まれ、1981年に小中学校の教員を養成する麗水師範専科学校(現在は麗水学院)物理学部を卒業した後、同省で官途に就きました。もし陳一新氏が習近平氏の知遇を得ることがなければ、単なる地方役人として人生を終えたことでしょう。習近平氏は2002年に浙江省党委員会に異動し、翌年に同省トップに就任しましたが、その頃、陳一新氏は同省党委員会弁公庁副主任や副秘書長を務め、習氏に仕える機会を得ます。このようにして陳一新氏は習近平氏の側近の1人となり、かつて習氏の政敵の牙城だった中央政法委員会に送り込まれることになったのです。

 なお、今年に入って武漢市で新型コロナの感染が広がると、陳一新氏は「中央指導組」の副組長に抜擢されて、2月に現地入りしています。陳一新氏が抜擢されたのは、習近平氏の信頼が厚い上に、2016年から18年まで武漢市トップを務めて、同市の事情に精通していたからです。更迭が決定された湖北省や武漢市のトップに代わって、陳一新氏は陣頭指揮を執り、感染拡大を抑え込むことに成功したことから、「浮上した新星」として日本でもその名を知られるようになります(『日経産業新聞』2020年4月14日付)。

 陳一新氏は、新型コロナの感染拡大を抑え込んだ実績からも明らかなように、抜群の能吏だと言ってよいでしょう。習近平氏は可能ならば、

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筆者

柴田哲雄

柴田哲雄(しばた・てつお) 愛知学院大学准教授

1969年、名古屋市生まれ。中国留学を経て、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程単位取得退学。2002年以来、愛知学院大学教養部に奉職。博士(人間・環境学)を取得し、コロンビア大学東アジア研究所客員研究員を務める。主著に、汪兆銘政権とヴィシー政府を比較研究した『協力・抵抗・沈黙』(成文堂)。中国の亡命団体に関して初めて本格的に論じた『中国民主化・民族運動の現在』(集広舎)。習仲勲・習近平父子の生い立ちから現在に至るまでの思想形成を追究した『習近平の政治思想形成』(彩流社)。原発事故の被災地にゆかりのある「抵抗者」を発掘した『フクシマ・抵抗者たちの近現代史』(彩流社)。汪兆銘と胡耀邦の伝記を通して、中国の上からの民主化の試みと挫折について論じた『汪兆銘と胡耀邦』(彩流社)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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