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戦後最悪の日韓対立のさなかに、日韓双方でエッセイ集を出す重圧

ポジティブな境界線に立つ ―『日韓関係論草稿』の出版に際して

徐正敏 明治学院大学教授(宗教史)、キリスト教研究所所長

「ポジティブ・コンタクト・ゾーン」を夢見て

 まず、韓国で出版されたエッセイ集の序文においては「ポジティブ・コンタクト・ゾーン」(positive contact zone)への志向性を中心に、筆者の考えを述べておいた。

 私は端っこが好きだ。学生時代も席の定めがない場合は、いつも端っこの方に座った。もちろん(足が不自由な私には)そこが出入りに好都合だという理由もある。大学の教員になっても、研究室は廊下の一番端を好んだ。現在の私の大学の研究室も、建物の5階の廊下の一番端である。端っことは境界線であり、そこでは隣り合うもうひとつの世界とのコンタクトが可能である。コンタクトすることによって両方の世界を知ることができるし、必要に応じて、そのどちらかを選択することもできる。とはいえ、あくまでも私の目指すところは、異なる両者を包み込むための肯定的な境界線の獲得である。そのような立ち位置は、「ポジティブ・コンタクト・ゾーン」とでも言い換え得るだろうか。(同書p.4。ただし本書は現時点で日本語に訳されておらず、当コラム用に作成した筆者の仮訳であり、確定された日本語文ではない。以下同じ)

拡大エッセイ集『他者の視線、境界で読む』(原著韓国語、ソムエンソム、2020. 11)、表紙絵は筆者画

 筆者は、韓国人として日本に暮らし、活動している。そんな筆者の生きる場所を境界線、あるいは境界地帯とみなしている。そしてその境界線は、上にも述べるように、どこまでも日韓両方を合わせて肯定的にみることができるために引かれた線である。

 そのような思考方法の一例として、次のような一節をここに転載しておく。


筆者

徐正敏

徐正敏(そ・じょんみん) 明治学院大学教授(宗教史)、キリスト教研究所所長

1956年韓国生まれ。韓国延世大学と大学院で修学。日本同志社大学博士学位取得。韓国延世大学と同大学院教授、同神科大学副学長、明治学院大学招聘教授、同客員教授を経て現職。アジア宗教史、日韓キリスト教史、日韓関係史専門。留学時代を含めて10年以上日本で生活しながら東アジアの宗教、文化、社会、政治、特に日韓関係を研究している。主なる和文著書は、『日韓キリスト教関係史研究』(日本キリスト教団出版局、2009)、『韓国キリスト教史概論』(かんよう出版、2012)、『日韓キリスト教関係史論選』(かんよう出版、2013)、『韓国カトリック史概論』(かんよう出版、2015)、『東アジアの平和と和解』(共著、関西学院大学出版会、2017)など、以外日韓語での著書50巻以上。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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