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世界の大学に忍び寄る監視システム

大学教育の「デジタル化」とコロナ対策を名目に日本でも?

塩原俊彦 高知大学准教授

 いわゆる「パブリック」な空間には、公共交通はもちろん、学校、教会、寺院なども含まれる。こうした「パブリック空間」における治安維持や安全確保を名目にして、世界中で監視ビデオや顔認証システムの導入が徐々に進んでいる。

 ここでは、学校、とくに大学での監視システム強化について考察したい。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策を名目に、顔認証システムつきの監視ビデオが中国だけでなく、他の国々でも広がりつつある現状に懸念をいだいているからである。「デジタル化」を推進する日本でも、監視社会への移行が急速に広がる危険がある。警戒しなければならない。

ロシアの監視システム「オーウェル」

拡大Shutterstock.com

 最初に、ロシアの実情を紹介したい。ロシアの「ヴェードモスチ電子版」(2020年6月15日付)によると、すでに12地域の1608の一般教育機関に顔認証システムつきの映像監視システムが納入されており、将来的にはロシアの4万3000以上のすべての学校にこのビデオ監視システムが導入される。

 このシステムの名は、監視社会の恐怖を訴えた『1984年』の著者ジョージ・オーウェルの名前からとった「オーウェル」という。なんとも皮肉な話だ。このシステムは学校の敷地内に許可された訪問者だけがいるかどうかを監視し、建物内や敷地内に不審者が現れた場合には即座に対応することができる。さらに、今後、学校職員の勤務時間を記録したり、教室で点呼の代わりに使用したりできるようになるという。

 2020年9月の別の情報では、クラスノダールのクバン国立大学、エカテリンブルクのウラル国立鉱業大学、カザン国立大学のほか、ムルマンスク工業大学、アムール医科大学などが顔認証機能付きの監視カメラを購入済みだ。赤外線カメラで体温測定が可能で、COVID-19対策の面も兼ね備えている。

 中国はこんなロシアよりもずっと「進んでいる」。2019年8月22日付の「中国の大学は学生登録向け顔認証を配備している」という記事によれば、清華大学はこの年の9月から入学する3800人以上の新しい学部生の入学手続きの迅速化のために顔認証システムを導入した。浙江大学や西安交通大学も同じである。これらの大学は今後、授業の出席状況にもこの顔認証を活用する計画だ。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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